ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
「海難史最大の謎」170年ぶり探検船発見 “北極利権”狙うカナダ
更新
カナダ・キングウィリアム島 1845年に英国を出港し北極海を通って大西洋と太平洋を直接結ぶ航路の開拓を目指した航海中に消息を絶った2隻の探検船のうち1隻が、約170年ぶりに発見された。捜索を行っていたカナダのスティーブン・ハーパー首相(55)が9日発表した。
現在の北極海では地球温暖化で海氷が激減した結果、新航路が出現。北極圏に眠る天然資源にも注目が集まり、ロシアや米国、中国、日本などが“北極利権”を狙っている。かつて英国領だったカナダは、今回の発見を通じて北極圏における主権をアピール。利権争いへの参戦をもくろんでいる。
「カナダにとってまさに歴史的な瞬間だ。約200年前の探検によって北極圏におけるカナダの主権の基盤が築かれた」
ハーパー首相は声明で、発見の意義をこう強調した。
発見されたのは、英海軍将校のジョン・フランクリン卿が率いた探検船「エレバス」と「テラー」のうちのどちらか。総勢約130人の探検隊はカナダ北側を通る北西ルートで大西洋から太平洋を目指したが、すれ違った捕鯨船2隻の乗組員に目撃されたのを最後に消息を絶った。
氷に囲まれて立ち往生し、乗員は全員死亡したとみられているが、何度も捜索隊が派遣されたが発見できず、その行方は海難史の最大の謎の一つとなっていた。北西ルートによる北極海の横断にはその後、ノルウェーの探検家アムンゼンが1906年に成功した。
英探検船の発見場所は、カナダ北部キングウィリアム島付近の水深11メートルの海底。考古学者やダイバーらも参加した政府の調査団が7日、遠隔操作の水中探査車両を駆使し、海底に直立する木造船を見つけた。メーンのマストは折れていたが、甲板の構造の一部が当時のまま残っているなど外観は保たれており、消息を絶った探検船であるとの確証を得た。今後、内部の調査を始める。
ハーパー政権は2008年以降、数百万ドルの巨費を投じて計6回もの捜索活動を行うなど、発見に全力を注いできた。
その理由は、かつての統治国の英国が北極海航路の開拓を目指したという歴史を世界に示すことで、北極圏におけるカナダの主権をアピールすることにある。
念願がかなったハーパー首相は「史上最大の謎の一つを解明できることをうれしく思う。もう一隻も近く発見し、フランクリン卿率いる探検隊に何が起こったかについてさらに解明したい」と意気込んだ。
かつて探検船の行く手を阻んだ北極海の分厚い氷は、その後に急速に進んだ地球温暖化で解けて激減。2012年夏には海氷面積が約410万平方キロと、過去最少を記録した。
その結果、航海が容易になった北極海航路は欧州とアジアをスエズ運河を経由するより約20日間も短縮できると脚光を集め、ロシアを中心に活用が活発化。中国や日本も航路開拓に乗り出したほか、米国やノルウェー、デンマークなども新ルートの開拓や資源獲得を虎視眈々と狙っている。
今回の発見で北極海航路にますます熱い視線が集まるのは確実だが、その前に、これ以上の海氷の減少を食い止めることが先決なのは言うまでもない。(SANKEI EXPRESS)