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【欧州サッカー】ドルトムント復帰 「おかえり」 シンジコール
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絶好調はこの男も。ACミランの本田圭佑(手前)はパルマ戦で、2戦連続のゴールを決めた=2014年9月14日、イタリア・エミリア=ロマーニャ州パルマ(共同) こういう表情を、満面の笑みという。本当にうれしそうだ。本人だけではない。サポーターの表情もいい。
サー・ファーガソン監督が去った後の英プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドでは、ついに見られなかった笑顔だ。ブラジルのワールドカップでも見たかったとはもう言うまい。終わった話だ。
独ブンデスリーガ、ドルトムントのホームスタジアム。13日は8万人の大観衆がスタンドをクラブカラーの黄色に染め、香川真司(25)を迎えた。繰り返される「シンジ・カガ」のコールばかりは黄色い歓声とはいえず、むしろ野太く、地鳴りのようでさえあった。
香川も見事に歓迎に応えた。懐かしのスタジアムにフライブルクを迎え、トップ下で先発。34分に中盤で反転してDFをかわし、右足アウトサイドで絶妙のスルーパスを送り、FWラモスの先制ゴールに結びつけた。
41分にはそのラモスが右からグラウンダーのクロス。ニアやゴール前に走り込む攻守の選手の間をすり抜けたボールはファーで待つ香川の足元へ。これを右足インサイドで落ち着いてゴール左隅に決めた。
地元テレビ局のアナウンサーは「おかえり、シンジ」と叫んだ。独紙ビルトは「KA-GALA」(香川祭り)の見出しで報じ、香川に最高点の「1」をつけた。英紙ガーディアンは「シンジ・カガワのハッピー・リターン」と伝えた。マンUのサポーターらは「なぜカガワを放出したのか」と怒りの声をあげた。
後半19分には足をつらせて交代したのは、マンUでの出場不足が響いたのだろう。17日の欧州チャンピオンリーグ初戦、アーセナル戦は欠場した。
だが出番も居場所もなかったマンU時代とは意味が違う。あくまでリーグ戦に向けた温存。2-0の完勝でスタンバイのまま試合を終えたが、劣勢か同点のままなら出番もあり得た。何より、ゴールシーンにベンチでクロップ監督と絶叫しながら抱き合う姿が、チームでの立ち位置、存在感を示していた。
≪トップ下 ここが僕の生きる場所≫
表情ばかりではない。顔は見えなくとも、背中の躍動感がゲームを仕切った満足感と達成感を表しているようだ。
香川真司の「おかえり」には、2つの意味がある。ひとつはもちろん、2年ぶりに復帰した古巣ドルトムントへの帰還。もうひとつは、マンチェスター・ユナイテッドで望んでも与えられなかったトップ下でのプレーだ。
香川の持ち味を知るクロップ監督は迷うことなく、復帰デビュー戦で香川をトップ下に据えた。水を得た魚のごとく、香川もこれに応え、パスを配球し、ゴール前に顔を出し、ゲームを支配した。ドルトムントのトップ下は、彼がこれまで一番、輝いた場所であり、これからの生きる道でもある。
ただし日本代表では「おれにはトップ下のDNAがある」と豪語する本田圭佑(けいすけ、28)が君臨してきた。その本田がまたACミランで絶好調だ。14日のパルマ戦では絶妙の先制アシストを決めると、2点目はDFの背後に走り込み頭で決めた。
開幕戦に続く2戦連発には辛口の地元各紙もこぞって高得点をつけ、ガゼット・デロ・スポルトは「考え抜かれた素晴らしい動き」と評した。
加えてドイツではマインツの岡崎慎司(28)も好調をキープ。13日のヘルタ戦に1トップで出場して2得点を挙げた。
これでブンデスリーガでの通算得点は28。レジェンド奥寺康彦氏の26得点を上回り、日本選手歴代トップとなった。ちなみに3位は高原直泰の25点、4位は香川の22点。
日本代表にとって欧州組の切り札3人の活躍はうれしい限りだが、4-3-3の布陣を敷くアギーレ新体制では、トップ下も1トップも、ポジションがない。3トップをこの3人と、大迫(おおさこ)勇也(24)=ケルン、柿谷曜一朗(かきたに・よういちろう、24)=バーゼル=や、アギーレに抜擢され結果を残した武藤嘉紀(よしのり、22)=FC東京=らと争うことになる。
さらにはJリーグ得点王の大久保嘉人(よしと、32)=川崎=や進境著しい宇佐見貴史(22)=G大阪、原口元気(23)=ヘルタ=らもこのポジションを狙っている。
新生日本代表には香川や本田、岡崎にさえ安住の地が用意されていない。競争が互いを高める結果になるか、タレントをつぶし合うだけに終わるか。アギーレの手腕にかかっている。(EX編集部/撮影:ロイター、AP、共同/SANKEI EXPRESS)