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政治
【女性2閣僚辞任】「政策前進へ」首相、早期決断
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≪小渕経産、松島法相 引責辞任≫
小渕優子経済産業相(40)と松島みどり法相(58)が20日、相次いで辞任した。小渕氏は関連政治団体の不適切な政治資金支出、松島氏は自身の選挙区内でうちわを配り、公職選挙法違反の疑いがそれぞれ指摘されていることに対する責任を取った。2012年12月に発足した第2次安倍晋三政権で、任期途中の閣僚辞任は初めて。
安倍首相は後任の経産相に宮沢洋一自民党政調会長代理(64)、法相に上川陽子元少子化担当相(61)を充てる人事を内定した。21日午前に皇居での閣僚認証式に臨む方針。首相は20日夜、官邸で記者団に「難問が山積している。経済最優先で政策を前に進めなくてはならない。行政、政治に遅滞があってはならない観点から後任を急いで決定した」と述べた。
同じ日に閣僚2人を失う「ダブル辞任」は極めて異例の事態。それでも首相は早期の幕引きを優先し、両氏を慰留さえしなかった。
「2人を任命したのは私であり、任命責任は首相である私にある。国民に深くおわびを申し上げる」
首相は小渕、松島両氏の辞表受理後、官邸で記者団に、自らの責任をあっさり認めて頭を下げた。9月の内閣改造からわずか1カ月半だが、野党の追及にさらされ閣僚が相次いで辞任に追い込まれるより、むしろ一気に決着させた方が政権運営に与える影響を最小限に食い止められると判断したからだった。
首相の判断は、第1次政権で味わった苦い教訓の上に立っている。当時は、高い内閣支持率でスタートしながら、事務所費問題を受けて佐田玄一郎行政改革担当相(当時)が辞任したのを皮切りに、松岡利勝農林水産相(当時)が自殺するなど次々と閣僚が交代し、支持率は急落。07年の参院選で大敗し、短命内閣に終わった。
閣僚の辞任による政権への悪影響を懸念したばかりか、自身が任命した閣僚を切れない“温情”も強く働き、対応が後手後手に回った結果だった。
首相が「ダブル辞任」を決断したのは今後重要な政治案件が続くこともある。30日には米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題が争点となる沖縄県知事選(11月16日投開票)が告示、年末には消費税率10%への引き上げ判断を控える。年が明ければ、九州電力川内原発の再稼働、15年度予算案の国会審議、春には統一地方選、集団的自衛権の行使容認に向けた安全保障法制の審議が始まる。
野党と真っ向からぶつかり合う局面が続くため、政権の安定化は欠かせない。そして、長期安定政権の先には、敬愛してやまない祖父の岸信介元首相が成し遂げられなかった憲法改正がある。
小渕、松島両氏のスキャンダルがいずれも有権者にとって拒絶反応が強い「政治とカネ」に絡む問題であることも早期の決断を後押しした。
小渕氏の政治資金をめぐっては「小渕優子後援会」など2つの政治団体が10、11年分の政治資金収支報告書で、支持者向けの観劇会の収入を計742万円、支出を計3384万円と記載。2642万円の差額が生じていた。小渕氏側が負担していれば、利益供与を禁じた公職選挙法に抵触する可能性がある。観劇会は12年も開かれたが、収支報告書に記載されていない。また、政治資金管理団体が親族企業からネクタイなどを政治資金で購入したことも分かり、野党から追及を受けていた。
松島氏のうちわ配布をめぐっては、民主党議員が公選法違反罪で東京地検に告発状を提出し、受理されている。
政権の女性登用方針を象徴する2人であっても、首相は温情にはとらわれなかった。(SANKEI EXPRESS)