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【エボラ出血熱】「万が一」列島警戒 厚労省 空港での検疫強化、医療機関も研修

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【エボラ出血熱】「万が一」列島警戒 厚労省 空港での検疫強化、医療機関も研修

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関西国際空港の検疫検査場で、エボラ出血熱の水際対策としてサーモグラフィーで体温を検知する担当者=2014年10月20日、大阪府泉佐野市(甘利慈撮影)  西アフリカで流行するエボラ出血熱について、米国で看護師2人が二次感染したことが国内の医療関係者にも衝撃を与えている。原因は調査中だが、医療水準の高い先進国で起きた二次感染はひとごとではない。厚生労働省は21日、ウイルス流入を防ぐため、空港での水際対策を強化。医療機関も研修を行い、「万が一」に備えている。

 高熱の人間を検知

 現地報道などによると、リベリア人男性は9月20日に米国に入国。26日に体調不良を訴えて受診したが、抗生剤を処方されて帰宅し、ダラス市内の大規模病院に搬送されたのは9月28日だった。男性はその後、エボラ出血熱で死亡した。

 エボラ出血熱は患者を早期に発見、治療することが生存率を上げるとされ、二次感染の予防にもなる。

 エボラは現在、ギニア、シエラレオネ、リベリアの西アフリカ3カ国で流行。セネガルとナイジェリアにも広がったが、この2カ国の流行は終息した。しかし、米国とスペインでは患者の治療に当たった看護師計3人が二次感染する事態になった。

 国内の航空各社は厚労省の要請を受け、海外から日本に入る全便で、エボラ発生国から3週間以内に出国した人は検疫所に申し出るよう、機内アナウンスを実施。各空港ではサーモグラフィーを設置し、高熱の人を発見できる態勢を取っている。東京検疫所東京空港検疫所支所(羽田)の佐々木滋氏は「流行国から入国する人にはエボラ患者との接触の有無を直接尋ねている」と話す。

 ただ、エボラウイルスの潜伏期間は2~21日で、検疫所を抜けた後に発症する可能性も高い。厚労省は21日、検疫法の通知を改定。エボラが流行する西アフリカ3カ国に滞在した全員に帰国から21日間、体温や体調の変化がないか1日2回、検疫所に電話で報告するよう義務づけた。報告を怠ったり虚偽の報告をした場合は罰則もある。

 渡航歴の確認徹底

 エボラ出血熱などの感染症の治療は全国45カ所の指定医療機関で行われる。だが、患者が最初に行く医療機関は自宅近くの医院も想定される。米国の男性患者は最初に病院を訪れた際、リベリアから来たことを伝えたが、病院側はエボラ感染を疑わなかった。初期の段階で医療機関を訪れても、早期発見につながらないことも考えられる。

 このため全国の約2400病院が加盟する「日本病院会」は、発熱患者には渡航歴を確認するよう全国の医療機関に通知。感染症コンサルタントの青木真氏は「高熱患者に渡航歴があると分かったら、医師はマラリアなど別の病気の可能性や両方にかかっている可能性も検討するだろう。不慣れな場合は専門家に相談してほしい」と話す。

 勤務態勢見直しも

 エボラ出血熱が疑われる患者を診察した場合、医療機関は保健所に連絡し、国立感染症研究所で検査が行われる。エボラと確定する前でも患者を隔離し、医療従事者はゴーグルなどで防護する必要がある。

 東京都保健医療公社荏原病院の黒須一見氏は「防護具を着用すると長時間の勤務は難しくなる。勤務態勢の見直しや防護具が正しく使えているか監視する人手も必要」と課題を挙げる。(SANKEI EXPRESS

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