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【エボラ出血熱】今後も疑い例 気を抜けぬ水際対策

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【エボラ出血熱】今後も疑い例 気を抜けぬ水際対策

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成田空港で、入国者に向けたエボラ出血熱対策のポスターを張る検疫所職員=2014年10月28日、千葉県成田市(共同)  ≪エボラ検査男性は陰性 首相、検疫徹底指示≫

 厚生労働省は28日、エボラ出血熱の流行が拡大する西アフリカに滞在歴があり、羽田空港で発熱がみられたカナダ国籍の40代の男性ジャーナリストは、国立感染症研究所の血液検査でエボラウイルスが検出されず、陰性と判定されたと発表した。

 男性は熱も平熱に下がったという。しかし、感染していた場合、発症直後はウイルスが検出されないこともあるため、念のため入院先の国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の隔離病室で経過観察を続ける。

 外務省はエボラ出血熱対策室を設置、海外在住の邦人への情報発信強化などに取り組む。

 政府は28日、エボラ熱対策に関する初の関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相(60)は「関係機関と緊密に連携し、検疫の徹底、迅速な初動検査、二次感染の防止に万全を期してほしい」と指示した。塩崎恭久厚労相(63)は感染が疑われた男性について報告。首相は「迅速、的確な情報提供で国民の安心、安全の確保に全力で努めてほしい」と求めた。

 厚労省は、関係部局で連携するための「エボラ出血熱対策推進本部」の初会合を開き、国内で患者を確認した場合の感染拡大阻止に向け協議した。エボラウイルスの特徴や国の取り組みに関しインターネットで分かりやすく情報提供することのほか、船舶による入国者への警戒の必要性を確認した。

 感染が疑われた男性は8月18日から約2カ月間、エボラ熱の取材でリベリアに滞在。10日ほど前に西アフリカを出て、ベルギーなどを経由し、ロンドン発の全日空便で27日午後、羽田空港に着いた。

 ≪今後も疑い例 気を抜けぬ水際対策≫

 西アフリカで猛威を振るい、米国でも検疫をすり抜けた感染者への対応に苦慮しているエボラ出血熱で、日本でも初の感染が疑われる例が報告され、検査で陰性と判定された。今回は、全入国者に流行国での滞在歴がないか確認するという水際対策が機能した形だが、疑い例が現れる状況は続き、気を抜くことはできそうにない。

 陽性なら緊急参集

 「ほぼマニュアル通りの対応ができ、検疫や税関、入管、警察の連携に混乱はなかった」-。エボラ熱感染が疑われた外国籍の男性が陰性と判定された28日、水際対策を担った羽田空港の関係者は胸をなで下ろした。

 リベリアに滞在していたカナダ国籍の男性ジャーナリストは27日午後3時35分ごろ、ロンドン発の全日空便で羽田空港に到着した。男性は入国の際に空港内のポスターや放送での呼び掛けに対して、流行国に滞在していたと申告。体温を測ったら37.8度あったため、警察車両の先導で国立国際医療研究センターに搬送し、隔離病室で経過観察する措置がとられた。

 27日夜の段階で政府は、男性は患者とは接触しておらず、嘔吐(おうと)や吐血など特有の症状もないとの情報を得たため「陽性の可能性は1%もない」(政府関係者)と分析していたが、陽性と判定された場合には、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)や塩崎恭久厚生労働相ら関係閣僚が首相官邸に緊急参集して対応を協議し、厚労相が1時間以内に記者会見を開き国民に説明するとの段取りを整えた。

 空港・港で警戒厳しく

 全入国者に流行国での滞在歴を確認する対策は24日に始めたばかり。きっかけは今月中旬、沖縄県の病院で起きた事例だった。

 事情を知る国立感染症研究所によると、西アフリカのリベリアに出張で約10カ月滞在した沖縄県の60代男性が、帰国10日目に発熱、高度な対応ができる指定医療機関ではなく、かかりつけの医院を訪れた。

 医師は抗菌薬を処方したが体調は回復せず、男性は別の病院を受診。病院では男性のリベリア滞在を把握したが、特別な感染対策はせず対応したという。

 結局、男性はマラリアと判明したが、感染研の大石和徳感染症疫学センター長は「医療機関側には西アフリカからの帰国後の発熱に対する認識が全くなかった。対応した事務員や看護師、当直医は防護服を着ていなかったし、検体も普通に扱っていた。もしエボラだったら…」と振り返る。

 この一件に肝を冷やした厚労省は、全入国者に滞在歴の確認を始めると同時に、滞在歴のある人には21日間、体温や体調の異変がないかを1日2回検疫所に報告するよう義務付ける対策を導入した。流行が深刻なギニア、リベリア、シエラレオネを行き来する日本人は年間300人程度と少ないが、空港や港での警戒は厳しさを増した。

 政府は、今後も疑い例が報告される事態は起きるとみているが、この段階で公表することには慎重だ。厚労省幹部は「疑い例を調べて本当のエボラだったというのは10件に1件程度だろう。検査前の疑い例公表にはメリット、デメリット両方あり、バランスをとるのが難しい」と話している。(SANKEI EXPRESS

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