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【勿忘草】熱かった政治への関心
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ブルキナファソ・首都ワガドゥグ 最近の西アフリカの話題といえば流行が広がるエボラ出血熱ばかりだが、その流行国の隣国でクーデターが起きたことをご存じの方はいるだろうか。4年前、2カ月間取材に訪れたことがある小国、ブルキナファソである。
2010年11月、ブルキナの首都ワガドゥグで大統領選の取材をしていた。選挙戦には現職のコンパオレ氏のほか多くの候補が立候補していたが、結果は最初から見えていた。選挙の体裁は整えられていたが、国民の支持を得そうな候補は最初から立候補させないコンパオレ式“独裁”による、形式的な事実上の信任投票だったからだ。
それでも、投票日直前のコンパオレ氏の集会は各地から動員された人々で大盛り上がり、人気音楽グループのミニコンサートが行われ、地方からバスでやってきた選挙権を持たない年の学生も楽しそうだった。
そして迎えた投票日。友達になったフランス人ジャーナリストと各地の投票所を回り市民の様子を取材していると、現地の新聞記者から話し掛けられた。「日本人がこの国の取材に来るなんて」と驚きながら、記者は私に「この国の選挙はどう?」と尋ねてきた。
開票所には立会人もいる。日本と異なるのは文字が読めない人も投票できるよう、投票用紙に顔写真が印刷されていて、丸をつけて投票することくらい。「投票の様子は日本とよく似ている」と答えると、記者はうれしそうにうなずいていた。
あれから4年。憲法の規定で次の選挙に出馬できないコンパオレ氏は、自身の立候補を可能にする憲法改正案を提出したが、軍部や市民の激しい抗議に遭い大統領を辞した。27年前、クーデターで政権を奪取した人物がクーデターで政権を追われるとは皮肉だ。
一連の取材で私が一番驚いたのは、国民がたびたび選挙の話をし、多くの人が投票所に足を運ぶことだった。特に若い人は熱心で、若年世代の政治への関心の高さがうらやましかった。
現在、ブルキナの政権は軍部が掌握していると聞くが、あの熱心な若者たちがより良い国を作ってくれると信じたい。目の前のテレビは、低投票率で選出された議員の不祥事を追及する国会中継を映している。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS)