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科学
ネット接続合戦 今度は宇宙から スペースX ミニ衛星700基打ち上げ計画
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米宇宙開発企業「スペースX」の最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏(43)が、宇宙に世界最小の人工衛星を大量に飛ばし、宇宙空間からネット接続サービスを展開する計画を進めていることが分かった。世界の人口の3分の2に当たる約50億人は、いまだにネットに接続できない環境下で生活しており、成功すればIT企業にとって市場拡大によるメリットは大きい。すでに米グーグルは「気球」、米フェイスブックは「無人機」を使って電波を飛ばす計画に着手しており、「ミニ衛星」を加えた三つどもえの空中戦が展開されようとしている。
マスク氏の計画は、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)が米時間の7日に情報筋の話としてスクープ。英紙ガーディアンやロシアのニュース専門局ロシア・トゥディ(いずれも電子版)など世界の主要メディアが一斉に後追いした。
ミニ衛星によるネット接続サービスは、9月にグーグルを退社し、人工衛星ベンチャー「ワールドビュー・サテライツ」を立ち上げたグレッグ・ワイラー氏と組んで行う。ワイラー氏はグーグルで人工衛星事業の責任者を務めていた。
計画では、250ポンド(約113キログラム)と現在、商用利用している人工衛星の約半分の重さの世界最小の衛星約700基を打ち上げ、広範囲をカバーする衛星群を構築。アフリカ大陸や中南米といったネット環境が未整備の地域に電波を送り、ネットユーザーの開拓を目指す。700基という衛星群は、世界最大の人工衛星企業「イリジウム・コミュニケーションズ」の衛星群の10倍の規模になる。
マスク氏とワイラー氏は大規模な人工衛星製造工場の建設も計画しており、ある関係者はWSJに「(立地をめぐって)最初の交渉がフロリダ州とコロラド州の当局者との間ですでに行われた」と話した。
ネット環境が未整備の途上国に電波を飛ばす計画では、グーグルが地上20キロ上空に浮かぶ大型気球を介し、無線接続を可能にする「プロジェクト・ルーン」計画を進めており、昨年6月、ニュージーランドで30機を飛ばす実験を展開した。フェイスブックはソーラー式無人機で上空から電波を飛ばす計画で、ジャンボジェット機(ボーイング747)並みの超大型機の試験飛行を来年に行うと発表している。
ここにスペースXが加わるわけだが、もともとワイラー氏の主導のもと、約10億ドル(約1140億円)を投じ、人工衛星によるネット接続サービスを計画していたのはグーグルだった。しかし、グーグル側が十分な開発ノウハウを持っていると確信できなかったため、ワイラー氏はグーグルを退社し、スペースXと組み直したという。
国際宇宙ステーション(ISS)に乗組員を運ぶ「宇宙タクシー」事業を米航空宇宙局(NASA)から受注し、宇宙開発分野で実績を挙げつつあるスペースXと、扱う無線帯域が広いワイラー氏のサテライツ社とのタッグは確かに理想の組み合わせのように映る。
しかし、10億ドルとされる事業費は巨額。スペースX側は衛星の製造コストを100万ドル(約1億1400万円)以下に抑える考えだが、技術面や法規制の問題もあり、容易ではない。もちろん、計画が成功すれば衛星700基の打ち上げも自社で請け負うことができ、一石二鳥にはなるが…。(SANKEI EXPRESS)