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【Q&A】和紙 無形文化遺産に 厳しい診査、グループ化で推薦
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本美濃紙の製作作業(文化庁提供) 和紙の製造技術が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録が決まりました。
Q 富士山や富岡製糸場はユネスコの世界文化遺産に登録されましたが、無形文化遺産はどこが違うのですか
A 世界遺産は「不動産」、つまり土地や土地と一体になった建物などの有形物が対象です。自然そのものの価値が評価されると世界自然遺産、人との関わりが評価されると世界文化遺産となります。一方、無形文化遺産は形がないものが対象で、伝統芸能や技術、祭礼などが登録されます。日本は2008年の能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎が最初でした。その後、京都祇園祭の山鉾行事などが続き、去年は和食が登録されました。
Q 和紙には形がありますが
A 和紙そのものが登録されたわけではありません。正式名称に「日本の手漉和紙技術」とあるように、対象は伝統工芸技術です。
Q 国が細川紙(埼玉県)、本美濃紙(岐阜県)、石州半紙(島根県)という構成で申請したのはなぜですか
A 工芸技術分野の国の重要無形文化財には、個人と団体が認定されています。個人は「人間国宝」と呼ばれ、和紙では福井県の越前奉書や高知県の土佐典具帖紙、兵庫県の名塩雁皮紙の製作者が当てはまります。国が団体として認定しているのは石州半紙、本美濃紙、細川紙だけです。団体の場合、国の補助を受け、昔ながらの原材料の確保や後継者の育成が組織的に進められており、「保護措置が取られている」というユネスコの登録条件を満たすと考え、申請したのです。
Q 今後、登録される和紙産地は増えますか
A 新潟や京都、鳥取などには、都道府県が認定した無形文化財の団体があります。将来、国の認定を受けるようになれば、追加登録の可能性が出てくるでしょう。
Q 審査が厳しくなっているとも聞きます
A 無形文化遺産は300近くになったため、ユネスコは13年から審査を1国当たり年1件に制限しています。15~16年は未登録国を除いて2年で1件の審査です。
Q 日本はどう対応していくのでしょうか
A 国の重要無形文化財を順番に登録していく方針ですが、今回の和紙のように特徴が似たものはグループ化し、まとめて1件として推薦することになるでしょう。
≪先行登録の石州 「オンリーワン」へ奮起≫
5年前に単独で無形文化遺産に先行登録された石州半紙の地元、島根県浜田市では、製作者をまとめる川平正男さん(73)があらためて喜びをかみしめつつ「遺産になっただけでは何も変わらない。オンリーワンのいいものを作り出さないと」と一層の奮起を誓った。
石州半紙の歴史は奈良時代にさかのぼるとされ、明治半ばには6000軒以上で作られた。だが今は需要が減り、わずか4軒に。遺産登録後も工房の数は変わらず、川平さんが会長を務める石州半紙技術者会は40~70代の会員4人で伝統をつなぐ。
「人口減で国内消費はさらに縮小する」。厳しい現実を見つめる川平さんは、障子紙や書画用紙といった昔ながらの用途にとらわれず、新たな作品を生む努力の大切さを訴える。
会員は和紙の糸で織った服やテーブルクロス、柿渋を塗って風合いを高めた紙皿など、現代のニーズに合う製品作りにも取り組んでいる。
外国人研修生への技術指導にも力を注ぐ。同じ紙すきの伝統をもつブータンとの技術交流を昨年、8年ぶりに再開した。男性研修生のニマ・ウォンチュクさん(19)は「たくさん学んでブータンの紙すき技術を高めたい」と笑顔を見せる。「いろいろな場所で石州半紙の技術が受け継がれていくといい」。指導に当たる技術者会の久保田彰副会長(64)は話した。(SANKEI EXPRESS)