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妊婦さんとインフルエンザ 大和田潔

 今年もインフルエンザのシーズンになってきました。クリニックでも、インフルエンザワクチン接種を開始しています。今年のワクチンには、A型(H1N1)、A型(H3N2)とB型(BX-51B)3種類が混合されています。H1N1は2009年に大流行した「新型ブタインフルエンザ」と呼ばれていたもので、毎年流行しています。

 高齢者や子供は、インフルエンザから気管支炎や肺炎になりやすいためワクチン接種が勧められています。「妊婦はインフルが重症化しやすい…原因は免疫増強か」(産経ニュース2014年11月12日)という報道もなされました。最初、おなかに別な個体である赤ちゃんが誕生すると、免疫寛容といって免疫反応を低下させる作用が働くためにウイルスへの抵抗性が落ちて感染が悪化するのではないか、と思いました。

 ところが、米スタンフォード大チームが、妊婦さんのリンパ球をH1N1ブタインフルエンザウイルスと反応させると、妊娠していない女性よりも過剰に反応したとのことです。免疫が落ちるのではなく、過剰に反応してしまい重症化したそうです。予防のために、ワクチンをきちんと接種した方がよいようです。

 インフルエンザワクチンにはチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)という防腐剤が添加されています。ごく微量でも殺菌作用を発するもので、ワクチンの品質を保つために必要なものです。水銀はごく微量なので、胎児には影響がないといわれています。厚労省からも「保存剤(チメロサール等)が添加されている新型インフルエンザワクチンの使用について」というお知らせも出ています。もし、気になるようでしたらチメロサール無添加のシリンジタイプのワクチンもあります。医師に添付剤なしをお願いすれば大丈夫です。

 もし、インフルエンザにかかってしまった場合は、ザナビビル(リレンザ(R))やラニナミビル(イナビル(R))といった吸入薬を選択すると、血液中への薬剤濃度を低く抑えることができます。風疹や麻疹も、妊娠中のウイルス感染は好ましくありません。赤ちゃんがやってくる予定の女性は、必ずワクチン接種をしておくことにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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