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冬こそ軽い運動を 大和田潔

 12月になり、東京でも気温が10度を下回り寒くなってきました。12月の中下旬に初雪を観測する年もあります。衣服を厚手のものに衣替えし、暖房器具を引っ張り出してきたり、乾燥に備えて加湿器を整備したりします。暖かい布団の中や、家から出たくなくなります。こういった環境を整えて体温を保つための作業は、「行動性体温調節」と呼ばれます。

 一方、皮膚表面の血管を収縮させたり、筋肉の運動や発汗を調節したりして体温を一定に保つ働きは、「自律性体温調節」と呼びます。寒い時に体がブルブルふるえますが、筋肉の収縮と拡張を小刻みに繰り返して発熱するためです。こういった反応は、意識せずに起きてきます。

 体内では、常に温度に敏感な酵素反応などの化学反応が無数に起きています。そのため、体温を一定に保つことは大変に重要です。

 私たちの体は、体温を見張っていて、さまざまな技を駆使して一定の温度に保とうとしています。こういった体を健全に保つためのシステムが自律神経系です。交感神経と副交感神経という対をなすサブシステムが拮抗(きっこう)しながら、体を一定の状態に保っています。そのため、体の自動反応によって体温調節が行われることを「自律性体温調節」と呼びます。

 真冬のお正月に開催される東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)のランナーは、待機中は保温のコートを着ていますが、走るときにはタンクトップに短パンです。全力疾走を継続している彼らの体内には、大量の熱が発生していて寒くないわけです。

 私たちも、彼らをほんの少し見習うとよいと思っています。男性が女性より冷え性が少ないのは、筋肉量が多いため発熱量が大きいからともいわれています。外に出て軽い運動をおこなうことは、筋肉を発熱させて熱源を体内に作りつつ、改善した血流で体の隅々まで運ぶという合理的なものです。

 体を動かすことは、体温調節を一定に保つ自律神経を鍛えます。古式ゆかしい「寒空の下で手足を動かして乾布摩擦(かんぷまさつ)」というのは、免疫をつかさどる皮膚のランゲルハンス細胞を賦活(ふかつ)するという意味でも、合理的なのかもしれません。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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