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タンザニアの子供たち 「本当はね、学校に行きたいの」

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タンザニアの子供たち 「本当はね、学校に行きたいの」

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「夢は学校の先生」。撮影用に書いた「夢」を手にしてたたずむメアリーちゃん=2014年8月3日、タンザニア(ワールド・ビジョン・ジャパン撮影)  今年8月、タンザニアを訪れた。そこに暮らす子供たちの生活を取材し、ドキュメンタリー形式で伝えるテレビ番組「世界の子どもの日常生活」を制作するためだ。タンザニアはアフリカ東部最大の国で、北側にはキリマンジャロ山がそびえ、東側はインド洋に面する、自然豊かな国だ。近年6~7%の高水準で経済成長しているものの、都市部と地方では貧富の差が激しく、1日1.25ドル未満で暮らす貧困状態にある人は国民の40%以上にものぼる。

 首都ドドマの北、乾燥した大地が果てしなく広がる地域で、メアリーちゃん(10)という一人の女の子と出会った。おばあさんも、お母さんも、メアリーちゃんも、学校に通ったことがないという。

 メアリーちゃんの話を聞いているとき、傍らにはずっと叔父さんがいた。この地域では、家長である男性に権威があり、女性や子供たちは男性の許可なく発言できない。メアリーちゃんも、遠慮がちで自由に思ったことが言えないように見えた。

 これではメアリーちゃんの本当の気持ちが聞けないと思った私は、叔父さんに「どうか、メアリーちゃんが何を言っても止めたり、怒ったりしないでほしい」とお願いした。すると叔父さんは快諾してくれ、ようやくメアリーちゃんはその胸のうちを明かした。「本当は学校に行きたい」と。

 メアリーちゃんは、往復2時間かけて毎日水くみに出かけている。水を入れると10キロ以上にもなるタンクを、頭で支えて運ぶ。その途中に小学校があり、時々教室の様子を眺めていたのだそうだ。「みんな、ペンとノートを使って何かをしているでしょ? 何をしているか分からないけど、楽しそう。私もそれがしたいの」と話した。

 そしてなんと「夢は学校の先生になること」とも。「学校には行ったことがないけど、いろんなことを教えてもらえるんでしょ。私の周りには学校に行けない女の子たちがたくさんいるから、私が先生になれば、みんなにも教えてあげられるから」

 ≪「未来を選択できる世界」夢見て≫

 このとき、私はある少女の言葉を思い出していた。

 「私には2つの選択肢しかありませんでした。一つは、声を上げずに殺されること。もう一つは、声を上げて殺されること。私は後者を選びました。(中略)私も教育を受けられなかった女の子の一人でした。私は学び、将来の夢をかなえたかった」

 今年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(17)の言葉だ。タリバンによって学校に行くことが禁止されていたパキスタン北西部の地域で、勇敢にも学校に通い続けることを選んだマララさんは、2年前、イスラム過激組織に銃撃され頭を打たれ重傷を負った。しかし奇跡的に回復し、現在はイギリスの高校に通いながら世界の子供たちの教育実現を訴えている。

 マララさんは言う。「学校に行けないと聞いたとき、もう医者にはなれないんだな、と思いました。きっと、13歳か14歳で結婚するような人生を送るんだろうなって。学校にも行けず、なりたいものにもなれず。だから、声を上げようって決めたんです」

 彼女のように勇敢に立ち上がることができる少女がいる一方で、そのほとんどが自分の思いを家族にさえ打ち明けられずにいる現実がある。メアリーちゃんと出会い、そんな悲しい現実が静かに確実に起きていることを知らされた。メアリーちゃんの夢の前には障壁が多い。家長である叔父さんやお母さんに教育が大きな可能性をもたらすことを理解してもらわなければならない。学校に通い続けるためには、家族に安定した収入がなければならない。メアリーちゃんを長時間の水くみから解放するため、家の近くに安全な井戸も必要だ。

 障壁だらけのように見える一方で、私は、数々の障壁にも負けず夢を抱くことができるメアリーちゃんの秘めた強さを感じた。どんな環境にいても夢を抱くことができるのだと思うと、少しうれしくもなる。マララさんの願う「世界中の子供たちが学校に通うことができる世界」、それは世界中の子供たちが、未来を自由に選択できる世界だ。私も、そんな世界を夢見ている。大きすぎる夢の前に、自分の無力さを感じてしまうこともある。それに、夢の実現には長い時間がかかってしまうかもしれない。でも、「“何もかも”はできなくとも、何かはきっとできる」、そんな精神で、自分にできることを一つ一つ、やっていきたいと思っている。

 ■やました・いづみ ラジオ番組ディレクターとして、文化放送、J-WAVEなどで音楽番組の制作に従事した後、米国ロサンゼルスの在米日本人向けラジオ局勤務。震災を機に「命を助ける仕事がしたい」と2011年7月にWVJ入団。チャイルド・スポンサーシップ課で新規チャイルド・スポンサー募集を担当。

 ■ワールド・ビジョン・ジャパン キリスト教精神に基づいて開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGO。子供たちとその家族、そして彼らが暮らす地域社会とともに、貧困と不公正を克服する活動を行っている。

 クリスマスまでに、あと3000人の子供を救いたい。チャイルド・スポンサーシップを募集しています。あなたも、チャイルド・スポンサーになって子供たちの夢を支えてみませんか? www.worldvision.jp/

 【ガイド】

 タンザニアで撮影した「世界の子どもの日常生活~タンザニアに生きる子どもたち」は、TwellV(BS12ch)で2014年12月10日(水)と16日(火)のいずれも午後5時から放送します。

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