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バイキング時代しのばせる環状砦 デンマーク・トレルボルグ
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トレルボルグは広くて平たいため、全体像を把握しにくく、付設された博物館内のミニチュアが理解を助けてくれる=2014年9月28日、デンマーク・トレルボルグ(銭本隆行さん撮影)
“城フェチ”を標榜(ひょうぼう)する筆者は、国内のみならず、世界をさまようたびに、各地の城や要塞を訪ねる。本来は血なまぐさいものでありながら、現在に至っては歴史のロマンを感じさせる遺物である。デンマーク東部にはバイキング時代に築かれた環状砦「トレルボルグ」が今に残っており、訪れる者に往時をしのばせている。
バイキング時代とは、北欧の民が船で侵略や略奪、移民などを活発に行った8世紀ごろから11世紀ごろまでを言う。戦いに明け暮れていた時代でもあり、このころにデンマークで環状砦が多くつくられた。
その中でも良好な状態で残っているのが、トレルボルグだ。首都・コペンハーゲンがあるシェラン島の西端に位置する。出土した木材の年輪調査で、西暦980年までに完成したとされる。
当時のデンマークを治めていたハラルド青歯王(在位958?~985年?)が築造したとされ、砦の目的として、(1)西シェラン地域の防衛拠点(2)反乱に対する王の防衛拠点(3)イングランド遠征のための訓練または冬営のための施設、の3点が推測されている。
築造後に短期間使われて以降は打ち捨てられていたが、第二次世界大戦前に発掘され、1995年に博物館が付設されて整備された。
砦は、小川や堀に囲われ、広さはサッカー場12個分に相当する約6ヘクタール。砦の中心部は完全な円形で、直径136メートル。内部は十字に4区画に仕切られ、長大な建物16軒が配置されていた。十字の四端に門が設けられており、上下左右対称の構造であった。
さらに砦の外側には、堀で囲われた郭が設けられ、建物15軒が配置されていた。ここでは最低157人が埋葬された墓も見つかっている。
これら砦全体で最大500~800人が滞在、生活していたと考えられている。日本の縄文時代の環状集落を精緻にしたような砦の作りに、洋の東西を問わない、戦いに備えた構造の共通性に感心した。
敷地の入り口に建てられた博物館では、砦の全体像を示したミニチュア、発掘によって出土した土器などの出土品、武具、バイキング時代の服装が展示されている。
そのほか敷地内には、当時の建物や小屋などが復元されており、バイキングたちの生活をしのぶことができる。訪れた時は土曜日で、ちょうどそれらの建物や小屋で、バイキング時代の服を身にまとった市民のボランティアが、鍛冶や手工芸、農業などを実演していた。
実はこうしたバイキングの“コスプレ”はデンマークではかなり人気がある。さまざまな催しで、趣向を凝らして手作りしたコスチュームを身にまとった市民を見かける。バイキングコスプレが市民の楽しみの一つとなっているのである。(国民高等学校「日欧文化交流学院」(デンマーク名=ノアフュンス・フォルケホイスコーレ)学院長 銭本隆行、写真も/SANKEI EXPRESS)