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「世紀の難工事」最高の掘削技術で挑む リニア着工 品川、名古屋で安全祈願式

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「世紀の難工事」最高の掘削技術で挑む リニア着工 品川、名古屋で安全祈願式

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リニア中央新幹線の「工事安全祈願式」を終え、報道陣の質問に答えるJR東海の柘植康英社長=2014年12月17日、JR名古屋駅(共同)  JR東海は17日、2027年に東京・品川-名古屋の先行開業を目指すリニア中央新幹線の「工事安全祈願式」を地下にターミナル駅をつくる品川、名古屋両駅でそれぞれ開き、建設工事に着手した。45年の大阪までの全線開通に向けた総工費9兆円に上る巨大プロジェクトが動きだした。

 工法使い分け

 品川駅ではJR東海の山田佳臣(よしおみ)会長ら幹部、地元関係者ら約20人が参加し神事が執り行われた。山田会長は「本当に息の長いプロジェクトだが、世代を超えて円滑、無事に引き継いで初めて成就する大事業だ」とあいさつした。

 リニア中央新幹線は最高時速約500キロで走行。品川-名古屋間の最短時間は現行の東海道新幹線の1時間28分から40分に短縮される。工事費は5兆5235億円で、全額をJR東海が自己負担する方針。

 工事の最大の難関は、品川-名古屋間286キロの8割以上を占めるトンネルだ。ゼネコン関係者は「今世紀最大の難工事になる」と口をそろえる。世界トップレベルとされる日本の掘削技術が試されている。

 トンネル区間が246キロメートルにもなったのは、リニアのスピードを生かすため、南アルプスを貫く直線ルートを採用したことに加え、都市部では用地買収が不要な40メートル以上の大深度地下を通るためだ。

 都市部(首都圏、中京圏の55キロメートル)の大深度地下は「シールド工法」で、山岳地帯(191キロメートル)は「山岳工法」で掘り進むことになる。

 シールド工法は土砂や粘土など軟らかい地盤に向いており、円筒状のシールドマシンでトンネルを掘削しながら、地盤の崩壊を防ぐために高強度のパネルでトンネルの形状を保つ方法だ。

 だが、今回は深い場所では100メートル前後の地点を掘るため「これまで経験のない高水圧下での施工になる」(清水建設幹部)という。

 ゼネコンそろい踏み

 山岳部はさらに問題を抱える。標高3000メートル級の山々が連なる南アルプスを貫通するため、掘削地点から地上までの高さ(土被り)は最大1400メートルに達する。土の重みに加え、地下水にも高い圧力がかかっており、地盤の崩壊や大量の出水が起これば工事はたちまちストップする。

 このため今回は山岳工法の中でも、主に「NATM(ナトム)」と呼ばれる工法を採用する。発破・掘削して土砂を運び出した後、岩盤が崩れないようアーチ状の鋼鉄を埋め込み、さらにコンクリートを吹き付け、ボルトを打ち込む。地盤の安定を確保しながら掘削していく方法だ。

 四方を海に囲まれ、山地が多い日本。その建築史はトンネル工事の歴史でもある。とりわけ青函トンネル(全長約54キロ)では度重なる出水事故や多くの殉職者を出しながらも過酷な工事を乗り越え、掘削技術を進歩させてきた。

 今回のリニア工事には大成建設や鹿島、大林組、清水建設といったスーパーゼネコンから、トンネルを得意とする準大手までがそろい踏みする。世界でも類を見ない大工事に、建設業界はまさに「オールジャパン」で挑む。(SANKEI EXPRESS

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