SankeiBiz for mobile

大深度、南ア掘削…世紀の難工事に挑む リニア着工認可 品川-名古屋、2027年開業目指す

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

大深度、南ア掘削…世紀の難工事に挑む リニア着工認可 品川-名古屋、2027年開業目指す

更新

山梨県のリニア実験線を最高時速500キロで試験走行する車両=2013年8月29日、山梨県都留市(桐原正道撮影)  最高時速500キロ超で東京-大阪を1時間余りで結ぶ「夢の超特急」の建設がいよいよ始まる。太田昭宏国土交通相は17日、JR東海が2027年に東京(品川)-名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線の工事実施計画を認可した。大阪までの全線開業の総工費は9兆円。東京-名古屋の全長286キロのうち86%をトンネルが占め、南アルプスを貫く「世紀の難工事」が待ち受ける。工期が延び、工費がさらに膨らむ可能性もある。

 月内にも住民説明会

 「開業まで時間的余裕はない。早期実現に向けて社を挙げて全力で取り組む」。認可後、都内で会見したJR東海の柘植康英(つげ・こうえい)社長はこう意気込んだ。

 20日に沿線の7都県に工事事務所を設置し、月内にも沿線住民への事業内容の説明会を始めるほか、測量や設計、用地取得、建設会社との工事契約などを順次進める。実際の着工は年明け以降になる見通し。品川-名古屋間の工事費は5兆5235億円で、全額を自己負担する。

 リニアは車両に超電導磁石を搭載し磁力によって浮上させ、最高時速500キロ超で走行。品川-名古屋の最短時間は現行の東海道新幹線の1時間28分から40分に、2045年の開業を目指す大阪までは2時間18分から1時間7分に短縮される。

 関西経済界や自民党の一部が求めている大阪までの同時開業について、柘植社長は「名古屋-大阪も時間のかかる工事。無理だ」と述べた。

 9割近くがトンネル

 品川-名古屋の9割近くを占めるトンネルのうち、都市部の延べ約55キロは、深さ40メートル以上の「大深度地下」を通る。用地買収が不要なことから大深度工法を採用したが、機材の搬入など課題も多く、地表から約30~40メートルの深さの品川、名古屋両駅の工事には10年以上かかると想定されている。

 最も難工事になるとみられるのが南アルプスを掘削する約25キロのトンネルだ。地表から最大で約1400メートル下にトンネルを掘るものの、崩れやすい地層とされ、大量の残土も見込まれる。当初は南アルプスを迂回(うかい)するルート案も浮上したが、JR東海は「直線的な最短ルート」を優先した。

 南アルプスのトンネル工期も10年以上が予想される。柘植社長は「慎重な議論を重ね、いけるという判断の下で計画を進めている」と強調した。

 実際の工事を担う建設会社も「やりがいや夢のある工事」(大手ゼネコン)と意気込む。ただ、日本建設業連合会の中村満義会長(鹿島社長)は「土木の場合、理論上と実際に掘ってみたときに違うこともある」と指摘する。

 JR東海は8月の工事実施計画の認可申請の段階で、品川-名古屋間の想定工事費を当初予想より935億円増額した。実際に着工すれば、難工事に加え、東日本大震災からの復興や20年東京五輪の建設需要による人手と資材の不足、それに伴う人件費と資材費の増大も懸念されている。リニアは多くのリスクを乗せて走り出す。(SANKEI EXPRESS

ランキング