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ダンスグループ「s**t kingz」 「世界一のキレ」で笑わせる

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ダンスグループ「s**t kingz」 「世界一のキレ」で笑わせる

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本番さながらにリハーサルで熱演する「s**t_kingz(シットキングス)」のメンバー=2014年11月5日、埼玉県戸田市(田中幸美撮影)  「これからみなさまを工場見学へお連れします。いつもは安全第一ですが、本日はテンション第一」。アナウンスとともにベルトコンベヤーに乗ってステージ上に現れた4人の若者が、いきなり踊り出した。ハンチング帽にサスペンダー付きパンツ姿は、まるで工場労働者のよう。スピード感にあふれキレのあるダンスは、4人が寸分違わずピタッと決まる。観客からは「イェーイ!」という歓声が盛んに沸き起こった。

 世界一のダンスグループの異名をとる「s**t kingz(シットキングス)」の公演が11月中旬、東京都世田谷区の世田谷パブリックシアターで行われた。演目の「WEEKDAY PLAYDAY」は、工場労働者の若者の日常をモチーフにした作品で、チャプリンの「モダン・タイムス」に着想を得たという。

 まじめに働いているつもりなのに、スプリンクラーが作動して工場内が水浸しになったり、野球のボールが工場の窓を突き破ってボスに当たったりと次々に起きるハプニングでドタバタ騒ぎ。こうしたコミカルなストーリーを、米のポップ音楽やジャズの名曲などにのせてダンスで表現する。

 演出と振り付けはすべてメンバーで考えるという。作品の構想はまず曲ありき。これは、ニュージーランドのポップ・ミュージシャン、ウィリー・ムーンの「ワーキング・フォー・ザ・カンパニー」をオープニングに使うと決めて、誰からともなく工場という舞台設定が上がり、細部が決められた。

 リーダーのshoji(30)は「社会的なメッセージなどはとくに入れていない。見て楽しかった、明日からも頑張ろうと幸せな気持ちになってもらいたい」と話す。

 公演を見た演出家の宮本亜門氏(56)は自身のフェイスブックで「大人から子供まで楽しめるエンタメ。表現者はここまでやってほしい! 世界中の人に見てほしい」と絶賛した。

 ≪米コンテスト連覇 「楽しめる」ステージ目指す≫

 「s**t kingz(シットキングス)」のメンバーはリーダーのshoji、kazuki(28)、NOPPO(28)、oguri(27)の4人。ダンスを始めたきっかけと時期はそれぞれだが、首都圏のダンスイベントや都内のクラブなどで知り合って2007年に結成した。

 当時YouTubeが出始めたころで、海外のダンス映像に触れる機会が増えた。そこでアメリカの世界的ダンサー、ショーン・エバリストや、ジャスティン・ティンバーレイクのダンサー兼コリオグラファー(振付師)であるマーティー・クデルカを知り、「これまでの方向性が変わるくらいに刺激を受けた」と、4人は口をそろえる。当時、海外のダンサーの踊りはリズム感やノリなどにおいて日本のダンサーとはニュアンスが違うように感じられ、目指す方向が一致した4人が磁石のように引き合ってユニットを作った。

 当初は自分たちがカッコイイと思う曲を持ち寄って、自分たちで考えた振り付けで踊っていたが、あるダンスイベントに出演したところ評判に。するとライブハウスやダンスイベントからオファーを受けるようになり、週末は必ずどこかで踊っていたという。さらにバックダンサーや振付師の仕事も舞い込むようになった。

 ちなみに、グループ名は当初、「客が失禁するくらいいいパフォーマンスを見せよう」という思いで愛称を「シッキン」とした。しかし、響きがあまり美しくないことから「シットキングス」に変えたという。

 そんな彼らの名前を不動のものにしたのは米カリフォルニア州で毎年行われる有名ダンスコンテスト「BODY ROCK(ボディー ロック)」。米のダンサー仲間に勧められ出場し、2010、11年に2年連続世界一に輝いた。このコンテストは、20~30人と大勢が群舞に近い踊りで挑むのが主流の中、日本からやってきたたった4人のダンサーは、その高いダンス技術と舞台構成で優勝をかっさらった。「名前を呼ばれても気付かなかった。まさかの優勝だった」という。

 ダンスコンテストで優勝することを目標にするストリートダンスのチームが多い中、シットキングスは「人に勝つためにコンテスト志向のパフォーマンスを作る気はなかった」という。むしろ目指すのは「自分たちもお客さんも楽しめるパフォーマンス」。それは今も変わらない。最近、薦められてある芝居を見た。「ダンスとは違うが、いろんなものを見て勉強して舞台に生かしたい」。シットキングスは次にどんなステージを見せてくれるのだろうか。(田中幸美(さちみ)/SANKEI EXPRESS

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