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オーストラリア・カカドゥ国立公園 自然と文化交差する「生物の宝庫」
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園内のイーストアリゲーター地区にあるクロコダイル・ホテル。地区名にちなんでワニの形をしたしゃれたホテルだ=2014年10月17日、オーストラリア・カカドゥ国立公園(宮崎裕士撮影) オーストラリア北部の町、ダーウィンの東約240キロにあるカカドゥ国立公園。自然と文化の両面でユネスコの世界遺産に登録される世界的にも希少な「複合遺産」だ。
園内は日本の四国ほどの大きさがあり、主要な観光スポットを巡るだけでもおよそ3日はかかる。湿原と熱帯雨林が広がった大地には2000種類以上の植物と280種類以上の鳥類が生息するまさに「生物の宝庫」だ。
カカドゥ国立公園を語る上で欠かせないのは、オーストラリア先住民のアボリジニの存在。園内の土地のほとんどはアボリジニが所有し、今も約500人のアボリジニが住み、狩猟、採取生活をしている。
園内には約2万年以上前に岩場に描かれたロックアートが鮮明な状態で残され、当時の生活を読み解くことができる。ワラビーや現地の魚「バラマンディ」などの生物や、神話上の人物など数百あるといわれるアボリジニの種族によって描く内容はさまざま。先祖代々から廃れることなく伝承されてきた技術は時代とともに形をかえ、今ではキャンバスなどに描かれるようになった。大地とのつながりを表した作品の数々は独自の世界観を持ち、今もなお世界的に高い評価を受けている。土産物としても人気だ。
≪地球の「原風景」一望≫
手つかずの大自然の醍醐味(だいごみ)を最も手軽に体感できるのが園内中央部にある最大級の湿原「イエロー・ウオーター」のクルーズだ。ボートに乗り、約1時間半かけて「ビラボン」と呼ばれる湿地帯をゆっくり進んでいく。クルーズエリアには約250匹の野生のワニがおり、時折酸素を吸うため水中から顔を上げる。湿原は茶色く濁りボートからは水中に潜ったワニの姿は全く見えないが、ワニからははっきりと見えているという。人を餌だと勘違いしジャンプする恐れがあるため、ボートから身を乗り出しての撮影は決してしないようにと注意を受けた。
進んでいくとガイドが木々を指さし、鳥がいる場所を教えてくれる。色鮮やかなキングフィッシャーや水面を大きな足で歩くレンカクも頻繁に目撃できた。中には魚をくちばしで串刺しにして食べようとする鳥もおり、大自然の食物連鎖を目の当たりにした。運がよければ水浴びをする水牛の群れにも出くわすことができ、多くの観光客が感嘆の声をあげ写真撮影をしていた。湿原が黄金色に染まる早朝や夕方の便もあり、ひと味違った自然の姿を味わえる。
園内で絶対に外せない観光名所は、北東部にあるウビルロックだ。駐車場から約1キロのウオーキングコースをアボリジニのロックアートを鑑賞しながら散策していく。
終盤やや険しい岩場を登りきると、眼下には360度パノラマの広大な湿原が広がる。夕日が沈む頃、空はあかね色に染まり幻想的な景色に包まれた。それははるか昔から変わることのない地球の原風景を見ているような気分であった。訪れた人にとって旅のハイライトとなるぐらいの感動を心に刻むことだろう。(写真・文:写真報道局 宮崎裕士/S ANKEI EXPRESS)