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いろんな解釈できる 何度も見直した 映画「自由が丘で」 加瀬亮さんインタビュー
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「どういうわけかホン・サンス監督と僕は感性が合うんですよ」と語る、俳優の加瀬亮さん=2014年10月29日、東京都渋谷区(宮崎裕士撮影) クリント・イーストウッド(84)、ミシェル・ゴンドリー(51)、アッバス・キアロスタミ(74)-。国籍も価値観も作風もまるで違う名匠たちの作品に積極的に出演することで、加瀬亮(40)は少しずつ自身の演技に独特の奥行きを与えてきた。そんな加瀬がもう一本、名匠の新作を自分のフィルモグラフィーに加えることになる。
韓国のホン・サンス(53)が監督兼脚本を務めた「自由が丘で」(英語作品)。青春時代の忘れ物を静かに探し続ける1人の男の姿が叙情豊かに描かれている。かつての恋人クォン(ソ・ヨンファ)を忘れることができず、モリ(加瀬)は彼女が暮らすソウルに向かった。だが、行方は一向に分からない。モリはゲストハウスに宿を取り、彼女にあてた日記風の手紙を書き始める。ほどなく近くのカフェ「自由が丘」の女主人(ムン・ソリ)と急接近し…。
加瀬が初対面のホン監督から出演を打診されたのは2年前、東京都内の映画館でのことだった。「3人のアンヌ」のPRで来日していたホン監督と雑誌の対談で意気投合し、終了後も喫煙室に場所を変え、映画談議に夢中になった。
「2人でたばこを吸いながら、ホン監督の学生時代のことなどの話をした記憶があります。話の流れで、ホン監督は『僕の新作に出てみないか』と誘ってくれました。帰国後もメールで連絡を取り合い、映画化へと動き出しました。監督とは感覚的に合ったんでしょう。僕にとってうれしい出会いでした」。ホン監督の「大ファン」を公言する加瀬は懐かしそうに振り返った。
ホン監督は俳優に対し、撮影当日に結構な分量のせりふを盛り込んだ台本を手渡し、わずか30分程度で暗記させた後、簡単なリハーサルを経て、すぐに撮影に入るという独特な手法を取った。結果的に普段着の加瀬たちの表情がみずみずしく切り取られているのも納得できる。
加瀬は撮影が楽しくて仕方なかった。「何かを準備して撮影に臨むというよりも、撮影現場で何かを次々と体験していくという感じに近かったですね。世界中を見渡しても、こんなスタイルを取る映画監督はいませんよ」。出来上がった作品を見て、加瀬はさらに驚いた。作品はソウル到着から日本への帰国までを描いており、撮影もほぼその順番で行われたはずなのに、完成品は時系列がばらばらになっていたのだ。「想定外のことでしたが、いろんな解釈ができる面白さがあります。僕は何度も見直しましたよ」
日本ばかりか、世界の名匠たちから薫陶を受け、どんどん演技の引き出しを増やしてきた加瀬だが、自分で監督をしてみようとは夢にも思わないという。大物監督たちの殺人的な仕事ぶりを目の当たりにしてきた加瀬にすれば、「とても自分がやるべきものではない」というのが実感だ。今後も出会うであろう世界の名匠たちがどんな演技を求めてきても、加瀬は「きっちりと、しなやかに、応えられるように努力を続けたい」と考えている。12月13日から東京・シネマート新宿ほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS)
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