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【エコノナビ】JA全中の脇役は必然

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【エコノナビ】JA全中の脇役は必然

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 「主役じゃないと気が済まない」。そんな俳優らの話はテレビ関係者の間でしばしばささやかれる。

 安倍晋三首相から「脇役に徹していただきたい」と牽制(けんせい)されても、あくまで既得権益死守にこだわるJA全中(全国農業協同組合中央会)の幹部らもそんな俳優らと同じ心境でいるのだろうか。

 安倍政権は、農協法を改正し、JA全中の地域農協への指導・監査権を全廃したうえ、経団連などと同じ任意組織にする改革を目指しているが、JA全中は指導・監査権は決して手放さないと譲らない。

 JA全中はこれまで、指導・監査権を名目に年間約80億円の賦課金を農協から集め、それを政治資金として活用し、農協・農水省・農林族議員の「農政トライアングル」を形成することに腐心してきた。

 しかし、今の農業衰退の現状をみれば、JA全中が本来の農業の育成や振興にどれだけ役立ってきたのか疑問だという声の方が正当性を帯びるのではないだろうか。

 そもそもJA全中が戦後ずっと守ってきたのは農業で生計を支える主業農家というよりも、農外収入の方が大半を占める第2種兼業農家といわれる。

 その兼業農家の多くはすでに65歳を超え、大きな関心事といえば、農地の固定資産税や相続税などの優遇措置や補助金を得る特権の維持・存続である。JA全中やその傘下の農協が、コストや効率、付加価値を高める努力を怠っているのもそうした組織構成員の状況に負うところが大きい。そして、農業に熱心な農家の口からいまだに聞かれる言葉は「全中は戦前の地主と変わらない」というものだ。

 こうした現状を踏まえれば、今議論されなければならないのは農政トライアングルの復活ではなく、どうすれば農業を魅力的な産業に変えていけるかである。

 農業を成長産業に変える第一歩としてJA全中が脇役に退くのは必然。日本の農業を支えようという主業農家や若者らに早く主役の座を譲るべき時である。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS

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