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日本のレゲエ 世界に挑む SPICY CHOCOLATE
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グラミー賞へのノミネートについて「うれしい半面、責任も感じる」と話すKATSUYUKI_a.k.a._DJ_CONTROLER(岡崎健志さん撮影、提供写真) また日本人の音楽が世界に進出するチャンスが訪れた。東京都出身のサウンド・システム(DJチーム)、SPICY CHOCOLATEが、有名リズムセクションのスライ&ロビーとコラボレートして制作したアルバム『THE REGGAE POWER』が、第57回グラミー賞の最優秀レゲエ・アルバム賞にノミネートされたのだ。中心人物のKATSUYUKI a.k.a. DJ CONTROLERに話を聞いた。
「憧れのスライ&ロビーとできるということで、トップ歌手たちをそろえて歌ってもらいました。日本からはクリスタル・ケイ、AI、青山テルマをフューチャーしました」
1994年に結成されたSPICY CHOCOLATEは、本場ジャマイカのレゲエをかけることにより活動を開始した。
「自分たちの主宰するレゲエ・イベントに日本語による歌手が出演するようになって、プロデュースするミックスCDもそうした曲を入れるようになりました。今回はグラミーを取るために、世界に通用する英語中心で勝負することにしたんです」
日本の歌手も豪華だが、本場の歌手たちもすごい。シャギー、ビーニ・マンは押しも押されもせぬレゲエのトップ歌手である。
「ジャマイカ、米国、そして日本のトップ歌手がそろったということです。これだけの歌手がそろうのは、やはりスライ&ロビーが受けてくれたことが大きいですね」
ジャマイカのトップ・プロデューサーであるスライ&ロビーはすでに約40年に及ぶ活動歴を誇り、演奏にかかわった曲は20万曲にも及ぶという。
「スタジオに入って、二人の生音に触れた時はさすがに震えましたね。伝説を生み出すだけの手応えがまさに感じられる音でした」
スライ&ロビーは鉄壁を誇るリズムセクションとして1980年代のレゲエ・シーンを風靡(ふうび)した。ブラック・ウフルーやマキシー・プリーストといったスター歌手たちのバッキングで目撃した日本のファンも多いはず。しかし、90年代に入ると、コンピューターによるダンス・ホールの時代になり、生バンドが後退する。94年に、サヨコ(高橋佐代子/ゼルダ)はスライ&ロビーのプロデュースによる「上を向いて歩こう」をリリースするが、その頃は完全に打ちこみスタイルだった。
「現在は再び、生演奏をベーシックにしています。コンピューターと併用することにより、今までにないゴージャスな音になってます」
現在のレゲエは、一つの曲でMCと歌手が入り乱れるスタイルになっている。この盤もほとんどの曲でラップ的なMCとムード満点のボーカルが2本立てで入るが、その心地良さは格別だ。特に冒頭を飾るクリスタル・ケイと青山テルマは、本来レゲエ歌手ではないにかかわらず、すばらしいこなれ方である。
「完成したトラックを、忙しい歌手の皆さんにお渡しし、仕上げていくんですが、予想を超えた完成度で返してくれましたね」
日本のRYO the SKYWALKER、CHEHONといった歌手は、本場ジャマイカのレゲエ言語であるパトワを体得しており、本場の歌手にまけないMCをこの盤で披露。一昔前までは、日本の歌手が世界の歌手に交じって実力を披露することなど考えられなかった。ここでは一枚のアルバムで、洋楽トップ歌手に交じって切磋琢磨(せっさたくま)が繰り広げられている。これは日本シーンの成熟ぶりを示しているのではないか?
「日本のレゲエアーティストとしてはじめてグラミー賞にノミネートしていただき、うれしい半面、責任も感じています。賞も取りたいし、しっかり紹介しなければ!と思います」
第57回グラミー賞の発表、授賞式は2月8日(日本時間9日)、ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる。楽しみだ。(アーティスト・作詞家 サエキけんぞう/SANKEI EXPRESS)