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金羊がモチーフの千年紀ビンテージ 「シャトー・ムートン」 青木冨美子
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仏ボルドー地方メドック地区ポーイヤック村にあるグランクリュ第一級の『シャトー・ムートン・ロートシルト』を象徴するのはムートン“雄羊”です。
シャトーのこだわりのひとつが“ラベル”で、1924年に図案デザイナーのジャン・カルリュが描いたラベルを使って以降、46年からは毎年世界の著名な芸術家たちの未公開作品が使われています。
日本の画家は未年とかかわりが深く、その第一号となったのがヒサオ・ドウモト(堂本尚郎画伯)で1979年ビンテージ(VT)を担当。12年後の1991年VTは巨匠・バルテュスの妻、セツコ(節子バルテュス)が描いています。
記念すべき千年紀(ミレニアム)の2000年VTは、1590年に作られた銀メッキ製のカップをモチーフにしたもので、オーナーであるフィリピーヌ男爵夫人(2014年8月没)がムートン・ロートシルトのワイン美術館にある所蔵品のなかからセレクト。エナメル加工のレリーフ手法で、金細工職人の技術によるムートンが圧倒的な存在感を示しています。
大切な方のおくればせの誕生日とマイ・バースデーを記念して抜栓したワインは、2時間程度空気に触れさせたくらいでは本性を見せてくれない底力でした。その後、少しだけ残っていたワインを利き酒して、ムートンらしい複雑味を感じ取ることができたのは2日以上の時間が経過してからでした。ボトルの装丁だけでなく、懐の深さも“特別な日の特別なワイン”と呼ぶにふさわしい“雄羊”です。(ワインジャーナリスト 青木冨美子/SANKEI EXPRESS)