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経済
【OMOTENASHI SELECTION 2014】金賞(4)十六夜 izayoi 伝統を再デザイン 新たな和の明かり
更新
西陣織などに使われる引き箔を使い、和の明かりに仕上げる三浦照明の三浦太輔代表。さまざまな職人の思いが集積する=2015年2月2日(石原敏彦さん撮影、提供写真)
■COS KYOTO株式会社 十六夜 izayoi
きらびやかで繊細な糸のように細かく裁断された箔(はく)の隙間から、興趣をたっぷり含んだ光がこぼれ出す。雲居に望む月のおぼろげな姿にいっそうの詩情を覚え、四季のめぐりに寄り添うかすかな変化に心を通わせる日本的な感性が昇華している。十五夜の次の宵、昨日よりもわずかに遅れて顔を出し、真円にほんの少しだけ及ばない月のたたずまいに、はにかむような感覚を見立てて、みやびやかな言葉に表した奥ゆかしい精神が立ち上る。
西陣織に伝わる引箔を使い、長く京都に居を構える照明製造の工房で生み出され、伝統の技と精神を継承し、現代の暮らしをより豊かにする新たな提案を投げかける。COS KYOTOの北林功代表は、現代の素材、技術、人を結び、季節の移ろいを鋭敏にすくい取り、洗練された文化を生んできた京都の視点からものづくりを進めている。
「伝統的な素材や工芸を現代に再デザインし、日常に生きる新しい価値を生み出したいと考えています。第一線で活躍するデザイナー、西陣織の製造卸の主人と仕事を進め、西陣織の帯などに使われる引箔の職人と出会いました。和装の将来について話し合い、優れた技を100年後に残したいと、和の照明をつくることに行き着きました」
金沢の職人の手による金箔を京都の職人が和紙に張り付け、裁断し、0コンマ数ミリの金色に輝く糸の連なりに仕上げる。微少な誤差も許されない熟練の技が集積した引箔は、祇園で120年以上も明かりに取り組んできた三浦照明の工房で組み上げられていく。和風照明に特化して空間の照明設計にも携わり、老舗旅館や由緒正しい茶室などから信望を集める。
4代目の三浦太輔代表は「和紙、竹、木、鉄、鋳物、真鍮(しんちゅう)、ガラスなど、さまざまな職人の手を経てきた素材を組み合わせ、日本的な情緒や感覚を盛り込んだ居心地の良い空間を提供したいと考えています」。
十六夜はデザインを実際の形にするため、どの素材をどんな形状にするかから試行錯誤を繰り返し、接着方法も一から考えた。
「台座と支柱は板金職人の弟がつくりましたが、たくさんの思いが一つの形となり、この姿を目の当たりにすることは、どの職人にとっても大きな励み、刺激となり、新たなものづくりの原動力ともなるようです」と目を輝かせる。
所在地:京都市北区紫野上柏野町10-1 COS101ビル www.cos-kyoto.com
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