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匠の技 日本のものづくり真骨頂 「菊池寛実賞 工芸の現在」
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築城則子_小倉縞木綿帯「月の舟」(2006年、提供写真)
日本のものづくりは、すごい! 当たり前のことを再認識させる展覧会だ。「菊池寛実記念 智美術館」(東京都港区虎ノ門)の「菊池寛実賞 工芸の現在」で、伝統工芸と現代工芸の作家12人が、神業ともいえる技術を駆使し、美の競演を繰り広げている。
2003年の開館以来、この美術館は陶芸作家や陶芸の研究家の育成を目指し、現代陶工の公募展「菊池ビエンナーレ」などを開催してきた。
しかし、12年の展覧会「茶の湯の現代」開催で、茶道具に関する金工、漆工、木工など幅広い公募を実施したところ反響があり、「菊池寛実賞」を設けて、工芸全般の育成、支援に乗り出すことにした。昨年末、一線で活躍中の作家の中から受賞者を含めた12人が、美術館関係者や大学教授ら専門家に選ばれ、その作品計54点が展示されている。
出品者12人は、築城則子(染織)=菊池寛実賞▽田口義明(漆工)▽相原健作(金工)▽中村信喬(人形)▽石田知史(ガラス)▽新里明士(陶磁)▽江波冨士子(ガラス)▽春木均夫(人形)▽神農巌(陶磁)▽武関翠篁(竹工)▽須田賢司(木工芸)▽山本晃(金工)の各氏。このうち9人が伝統工芸に属し、須田、山本両氏は選定後、重要無形文化財保持者(人間国宝)にも選ばれている。
菊池寛実賞に輝いた築城さんは、昭和初期、不景気や、量産に向けての工業化の影響を受けて途絶えた「小倉織(こくらおり)」の復活に貢献した。
江戸初期から北九州地域の特産だった小倉織は綿糸を染めてから織機にかける。縞模様の美しさ、丈夫さ、絹織物のようなツヤや手触りの良さが特徴。築城さんが1枚の古い端切れから復元した。その功績と、シャープな作品の美しさが高く評価された。
山本さんの切嵌象嵌(きりばめぞうがん)接合せ箱「白椿」は、ツバキの葉の黒、灰色、薄い灰色の部分に種類の違う金属を使用。葉の輪郭を描く白線の部分でくっつける「接ぎ合せ(はぎあわせ)」という技法を駆使している。技能と根気、両方いる手の込んだ作品だ。
国際展などで活躍する30代の若手、新里さんの陶磁は、薄く作った器に丹念に穴を空け、その穴に透明な釉薬をかけて、光が通る陶磁作品に仕上げる。こうした技法は古くは中国などにもあったが、ここまで徹底した作品は注目を浴びている。
石田さんのガラス工芸も夢がある。「鋳込み硝子」と呼ばれる技法で、石膏の型にガラスの粉を敷き詰めて焼成する。自在な形と、細かな気泡が入ったソフトで虹のような色合いが、メルヘンの世界に誘う。
今後は、それぞれ隔年で開く菊池ビエンナーレと菊池寛実賞が、今後の展覧会の2本柱になっていくという。高田瑠美学芸員は今回の展覧会について「クオリティーの高い作家がそろった。30~70代までと年代は幅広いが、キャリアは十分で、見応えがある」と話している。(原圭介/SANKEI EXPRESS)