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従来のイメージ覆す「装飾性」「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」
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アンリ・ラパン「朝香宮邸_大客室壁画」(1933年、東京都庭園美術館)=2014年10月27日(提供写真)
19世紀末からのアール・ヌーボーに続いて、第一次世界大戦(1914~18年)ごろから第二次世界大戦(39~45年)にかけ、装飾様式として広まったアール・デコ。これまでは、機械化の発達に関連し、直線や幾何学を使ったモダニゼーション(近代化)の面ばかり強調されて語られてきたが、実は古代のギリシャ・ローマ、18世紀の新古典主義から題材を引用した「古典主義」も含まれていた。アール・デコに対するイメージを一変させる展覧会「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」が東京都庭園美術館(港区白金台)で開かれ、注目されている。
アール・ヌーボーは、江戸時代の日本の漆器や磁器のデザイン、オリエント美術などからの影響で、植物がモチーフの曲線を多用し、豊かな装飾性が特徴だった。
対照的にアール・デコは、直線やジグザグ、円弧、流線形を組み合わせ、過度な装飾性はなくなり、すっきりしたデザインが特徴といわれてきた。それは近代化や都市化、工業化が進む中で、量産できるデザインや機能性が求められていた背景があるとされてきた。
しかし、この時代、フランスでは、より“フランスらしい様式”を求める動きが出ていた。それが、古代ギリシャ・ローマ、18世紀の新古典主義から題材を引用した「古典主義」のアール・デコだったという。
第一次世界大戦の影響で約10年間遅れて、1925年にパリで開かれた現代・装飾美術・産業美術国際博覧会(通称、アール・デコ博覧会)では、そのフランス新様式のお披露目がなされる。とくに装飾美術家協会のパビリオン「フランス大使館」の計画で、中心的な役割を果たしたのがアンリ・ラパンだった。
ラパンは、フランス大使館の大サロンなどで、花をあしらった家具や壁画など18世紀の新古典主義を引用した装飾を展開した。
ラパンは1933年、東京都庭園美術館の前身となった旧朝香宮邸の内装デザインも担当し、古典主義のアール・デコ様式を駆使した。
例えば、大客室壁画には、ライオンの頭から流れる水や花たづな、鉢植えの花などが描かれている。これらは、18世紀新古典主義からの引用だという。
展覧会では、旧朝香宮邸のガラス工芸も担当したルネ・ラリックや、アール・デコの天才デザイナー、ジャック・リュールマン、古典主義のモチーフで描いたジャン・デュパやロベール・プゲオンらの画家を含む計33人の絵画、彫刻、工芸、磁器、家具などを展示している。
アール・デコは2つの戦争に挟まれたこともあって検証されず、1970年ごろから「アール・デコ様式」として認められるようになった。しかし、「工業化や技術の進歩など“進化していく”ことに重きを置く時代の潮流の中で、逆方向の『古典主義』が含まれていたことはあまり注目されなかった」(東京都庭園美術館の関昭郎事業企画係長)。
しかし10年ほど前から、アール・デコが多様な文化の上に形成されていたことを再解釈する動きが出ているという。(原圭介/SANKEI EXPRESS)