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【パリの中庭】評価される日本の「ORIGIN」

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【パリの中庭】評価される日本の「ORIGIN」

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NAKANIWAで行われるエキシビジョンに合わせて製作される“BREAKFAST”シリーズ=2014年12月2日(上出長右衛門窯・丸若屋提供)  海外において評価される日本の“ものづくり”や“伝統”とは一体何か。パリでギャラリー「NAKANIWA」を営む日々の中で深く考えさせられるテーマだ。これらが日本の文化と深く結びついていることは言うまでもない。しかし文化とは根付かせるのも理解してもらうことも容易ではない。日本に暮らす日本人ですら認識が定かではない。いくら良いものを深く理解し、自らの生活に取り入れる欲求が高いパリだとはいえ、現時点で日本の文化を正確に理解している人々はごくわずかだろう。一方、パリにおいて興味の対象として日本に目を向ける人々は多いが、良い面もそうではない面もふくめ内容は表層的であることが多い。こうした状況において本気で海外に“何”を伝えるのであれば、現地の生活者ときっちりと向き合い一人一人に体感をベースにした“感動”を与える必要がある。

 本質を見つめ直す

 2015年、NAKANIWAは新たなプロジェクト“ORIGINS”を発表した。パートナーは石川県九谷焼の上出長右衛門窯である。2014年に始動した、有田焼400周年事業の一環である“SEEDS of ARITA”に続く試みだ。テーマは「0に立ち返るという新たな一歩」で、136年の歴史を積み重ねた九谷焼上出長右衛門窯とともに日本各地を旅し、多くの自然と各地の職人たちと出会うことを重要なプロセスとした。

 まず私たちがとりかかったのは、日本を見つめ直すという行為だった。期間は半年、私と上出氏とは日本各地のものづくりの現場を丁寧に巡った。磁器はもちろん、和紙や藍染めなどの産地にも赴き、さまざまな技術に触れた。そして、お互いが持つ経験と視点を生かし、ものづくりの何が本質であるかを見極めることに努めた。次に、日本とヨーロッパの文化を考慮し圧倒的に交流の多い「食」をターゲットとした。そして、国や文化を超えてどのシーンでも成立する食器のフォルムやサイズとはなにか、美しいと感じる白とはどんな白なのかという、基本的な検討を積み重ねた。

 信念をカタチに

 一連の行為のベースには、NAKANIWAの信念である「日本の美意識の押し売りをしても何も始まらない」という考えがある。したがって、普遍性の高いポイントを発見するプロセスをとにかく重視した。結果私たちは、固定概念や小難しい伝統論などを消し去り、手に取る人々の感動であり笑顔こそをゴールに定めることができた。もうひとつ大きな発見になったのは、地域や分野を超えて職人たちが情報交換することにより、それぞれの技術を深く見直すきっかけとなることだった。

 彼らは技術を追求し表現を高めてきた人々であり理解が極めて早い。いきなりものづくりを0から考え直すといっても、積み重ねてきたものの上に立つ人々にとっては容易ではない。「旅」というアプローチが、そうした壁を超える鍵になるということを体感できたのは大きな収穫であった。

 文化の接点として

 誕生したのが、NAKANIWA初めてのオリジナル商品でもある「BREAKFAST」である。その名の通り朝食をイメージした商品で4つの品物から構成しているが、もちろん用途は限定しない。なぜ朝食をターゲットにしたのかといえば、それが1日における最初の「食」との接点だからである。一連の商品群に用いられたフォルムは極めて古典的な形状を再構築したものだ。目を奪うのは白磁の器に施された一本の青い線。数ある窯元の中でも、特に高い評価を受ける上出長右衛門窯の絵付け。それを長い年月支えてきた職人たちが、絵柄ではなく一筋の線に思いを託している。フランスの青であり、日本の青が、今こうしてパリの地で異文化に触れたことで誕生したこの品に用いられたのは偶然ではない。私たちの思いを集約した逸品になったと自負している。(「丸若屋」代表 丸若裕俊(まるわか・ひろとし)/SANKEI EXPRESS

 ■丸若裕俊(まるわか・ひろとし) 「丸若屋」(maru-waka.com)代表。日本とフランスを拠点に、伝統工芸から最先端工業に至る幅広い分野で最高峰の技術との革新的な取り組みを通し、21世紀を生きる人々の生活に驚きと喜びの提供を行う。パリ・サンジェルマンにて、美しき日本の品々の展示販売を行う“NAKANIWA”をオープン。2016年に創業400年を迎える有田焼の海外プロジェクトも2014年に始動。

 ■“ORIGINS” KUTANI CHOEMON’s Journey 上出長右衛門窯と丸若屋の協働プロジェクト。全国各地に散らばるさまざまなものづくりの地を訪ねながら、自らのものづくりの原点を見つめ再構築することを目的としている。

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