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自分の香り 「聞いて」見つける リスン京都
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香りごとに番号と名前が付けられたインセンス。1本から、好きな香りを好きなだけ選べる=2015年1月23日、京都市下京区(志儀駒貴撮影)
香りを聞く-。日本の伝統的な芸道である香道において香りは「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現する。「リスン京都」(京都市下京区)は、日本古来の言葉と、英語の「Listen(聞く)」の発音記号「lisn」(リスン)とを掛けて店名としたインセンス(香り)の専門ショップだ。火を付けて香りを楽しむスティック状のインセンスをメーンに、ホルダーやサシェ(匂い袋)などのアイテムも取りそろえている。
ガラス張りの店に入ると、やわらかな香りがふわりと漂う。波形の壁面やカウンターは香りが流れていくようなイメージを表している。
「ゆっくりと香りを選んでいただきたいという思いからスペースを十分に取っています」とショップマネージャーの松井香織さんが説明する。「リスン」のデザインコンセプトは「モノトナス」。“単調な”という意味を表しているという。「香りを存分に体感するための舞台である店舗も、まさにその言葉通りのデザインといえます」
さて、主役の香り。「ブロークンブロッサム」「チェリールージュ」「ツユクサ」…。ずらりと並んだ色とりどりの、スティック状のインセンスには一つ一つ名前が付けられ、約150種類も。色合いも美しく、香りの番号と名前が細いインセンスの側面に印刷されている。
「1本から、好きな香りを好きなだけ選んでいただけるのが特徴です。お出かけ前、就寝時、リラックスしたいとき…というふうに、シーンに応じて自由に使い分けてください」と松井さん。いろいろ試して好みの香りを見つけたいという人にとって、1本(30円+税~)から購入できるのはありがたい。
花の香りの「フローラル」、草木を思わせる「グリーン」、白檀(びゃくだん)など伝統的な素材を使用した「クラシカル」など全部で8つのカテゴリーに分類されているので、好みの香りを選びやすい。長さは約7センチ。「火を付けてから15分ほどでたき終わります。たき始めから、残り香まで楽しんでください」と松井さん。
毎年新しいテーマのインセンスも創作しており、現在は「惑星」がテーマ。水星、金星、火星…とそれぞれをイメージした7種の香りが展開されている。たとえば、土星をイメージした「300 リープマント」は、ムスクをベースにバラとハマナスが織り込まれた魅惑的な香り。天王星の「301 ファーマメントアイランド」は、ミントにカルダモン、ゼラニウムを合わせたスパイシーでクールな香りとなっている。
また、インセンスを楽しむためのホルダー類は機能的ながらデザイン性も高く、インテリアとしても有用。バッグやポケットに忍ばせて香りを楽しむサシェも充実している。「名刺を差し出すとほんのりいい香りが…」というのを身だしなみの一つに取り入れたいものだ。
300年の歴史を誇る香の老舗・松栄堂(京都市中京区)が「火を付けるだけで香りが楽しめる手軽さや楽しさを広く紹介したい」と、1989年に京都・北山に「リスン」をオープン。2004年、四条烏丸に「リスン京都」として移転した。「リスン京都」の人気と相まって、「インセンス」という言葉も今ではすっかり定着した。
地元京都はもちろん、国内外のリピーターも多い。毎年の京都旅行の際に必ず訪れる海外のファンもいるという。
「先入観なくシンプルに香りを感じていただきたい。香りの楽しさや奥深さを知る、出合いの場であってほしいです」と松井さん。奥ゆかしい香りに包まれた生活、さっそく始めることにした。(文:杉山みどり/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)