ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
焼きたて切りたて 衝撃のうまさ ローストビーフの店 ワタナベ
更新
客の目の前で焼き上げ、切り分けられるローストビーフ。外側はこんがり香ばしく、中はきれいなロゼ色。あっさりしているので何枚でも食べられる=2014年10月23日、京都市中京区(恵守乾撮影)
焼きたてのローストビーフが食べられる! そんな珍しい店があるという評判を聞きつけ、訪れたのは京都市中京区にある「ローストビーフの店 ワタナベ」。目の前で焼き上げ、切り分けられたローストビーフは、今まで食べたローストビーフとは一線を画していた。まさに衝撃の一品だ。
世界文化遺産・二条城の南東に位置する店は、地下鉄東西線「二条城前」駅から徒歩5分。緑色の壁の店舗は、カフェかビストロのような雰囲気だ。2卓のテーブルにはそれぞれ鉄板がしつらえてある。厨房(ちゅうぼう)のオーブンで焼くものと思っていたが違うようだ。
「目の前で焼いてくれるの?と、たいていのお客さまが驚かれますね」とオーナーシェフの渡辺勇樹さんが肉の塊を運んでくる。
肉は黒毛和牛の希少部位・イチボ。表面約1ミリに焼き色がついたら、じっくりと蒸し焼きに。鉄板からあがる音と香りに刺激されながら待つこと30分。切り分けられたロゼ色の肉にうっとりする。まずは何もつけず一口。脂が甘い! 赤身部分はかむほどうま味が広がる。
「ずっとかんでいたい、飲み込みたくない、と言われる方が多いんです」と渡辺さん。そのままでも味わい深いが、自家製のグレービーソースと西洋わさび、マスタードも用意されており、味の変化が楽しめる。グレービーソースは、鉄板に仕掛けがあり、ローストビーフの焼き汁を利用して作る。しょうゆは使っていないそうだが、すっきりした和の風味も感じられる。
「ローストビーフは焼きたての切りたてが一番おいしいと思うんです」。そう話す渡辺さんは、かつてホテルで腕を磨き、いつかフランス料理の店を持つという夢を持っていたという。特徴のある店にしたいと考え、ひらめいたのが、ローストビーフ専門店だった。
「冷製だったり、既に焼いて切り分けたものにソースをかけたりして提供するんですが、厨房で焼きたてを目の前に『今、食べたらおいしいのに…』と思っていました」。そこで、一番おいしい状態で食べてもらおうと思い立った。
モデルになる店がないため、手探り状態で一から進め、「着想からオープンまで7年掛かりました」と笑う。テーブルの上の分厚い鉄板も特別仕様でオーダーした。初めは強火で焼き、余熱で火を通すためにはこれくらいの厚さが必要だとか。表面はカリッとほどよくスパイシーで中は肉本来のうま味が凝縮した、この店でしか味わえないローストビーフ。付け合わせのニンニクやジャガイモ、タマネギもほくほくだ。
アミューズ(最初の一品)のレンコンとバジルのコロッケに続いて、数種類から選べるオードブルは「シャルキュトリーの盛り合わせ」を。シャルキュトリーとは肉の加工品のことで、パテもリエットもハムも自家製だ。メーンのローストビーフの後にデザートかチーズと飲み物(コーヒーか紅茶)が付いて4000円(税抜き)。
壁には年代物のコーヒーミルが掛かっている。「プジョー」製で、この有名な仏自動車メーカーの前身は歯車やミルなどの金属製造会社だそうだ。このミルでひきたてのコーヒーをいただけるのもうれしい。パフォーマンス(目)、香り(鼻)、味(舌)と存分に楽しめる店だ。
昨年7月のオープンだが、「京都観光のついでではなく、この店を目指して京都に」と全国各地から客が訪れる人気店となった。京都、いや日本随一のローストビーフ専門店と言っても過言ではないだろう。(文:杉山みどり/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS)