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5つの味覚にこだわり 深みある味わい 京都ホテルオークラ 桃李
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京都ホテルオークラの中国料理レストラン「桃李(とうり)」は、京都ホテル時代の1979年9月の開店以来、味にうるさい京都人に親しまれる名店で知られるが、9月1日、94年のホテルの本館建て替え以来となる初の全面改装を行った。より高級感と清潔感があふれる店内では、新たにビュッフェ・スタイルの朝食の提供をスタート。飲茶や粥(かゆ)はもちろん、ホテルメイドのパンやオムレツなども楽しめるようになり、顧客層の幅を広げている。
地下1階の店内に足を踏み入れると、白を基調とした美しく広々とした空間が広がる。個室もVIPルームの「黄龍」と「青龍」をはじめ計5室。モダンで開放的なイメージは中国料理レストランの枠に収まらない。
桃李の料理長、牧定広氏(52)は「基本となる味付けは変えず、リニューアルによって各料理の見え方が変わってくるので、より重厚で繊細な盛り付けを心がけるようにしたい」と説明する。
中国や東南アジアなどアジア圏の顧客のニーズを踏まえ、朝食をスタートさせたわけだが、メニューは中国料理にとらわれず、洋食の定番であるオムレツやハム、サラダ、ベーコンからベトナム料理のフォーといったエスニック系と幅広い。
「パンは朝焼いたホテルメイドのもので、ジュースも1人分の適量を個々に瓶詰めして冷やすことで新鮮さを保っています。オムレツもほどよい塩味を感じられるよう塩加減への気配りは欠かせません」(牧氏)
そして、看板である中国料理では「四川料理の辛さは口の中に感じる痛みだし、広東料理ならうま味というように、5つの味覚をはっきりさせる事が重要」(牧氏)との考えが基本になっている。
身だけを取り、三等分にして味付けし、表面に片栗粉を付けて揚げた「オマールエビのチリソース」は、外はカリッと、中はプリプリという絶妙の食感に加え、5つの味覚をはっきりさせるというポリシーに裏打ちされた秘伝のチリソースは、濃厚かつ味の深みが他のエビチリとは比較にならない。
また「10年ほど前に、レストランで有名になるものを提供しよう」(牧氏)とお目見えした「究極の杏仁豆腐」も絶品だ。本来の作り方を踏襲しながら、中心的な原材料であるアンズの種の中の核「杏仁」は、苦みのある中国北部産のものと、甘みのある香りが特徴の中国南部産のものをうまく配合。さらに滑らかな甘みを出すため、四国東部で生産される有名な砂糖「和三盆」を使用するなど、細部にもこだわり抜いた。
これを竹筒に入れて提供するのだが「ガラスの器だと普通なので竹筒を使ったのですが、味の良さに加え、他のお客様からは『竹筒持って、何を食べているのだろう』との疑問や興味から注文が増え、今ではすっかり人気メニューです」(牧氏)。
そして一番の看板メニュー「青鮫のふかのひれの姿煮込み」。宮城県の気仙沼港で揚がる鮫の中でも数%という青鮫は肉厚であり、繊維も太い超貴重種。これを柳川風の浅い鍋で温めながらいただくが、ヨシキリザメのものの約2倍という肉厚だけに食感は最高。このメニュー、単品で1万98円(税・サービス料込み)もするが、これが目当てのリピーターも多いという。
京都市出身でこの道約30年の牧氏は「これからも顧客の9割を占める京都人に愛される中国料理を提供したいですね。京都人は微妙な味に敏感で、電話予約では『声聞いて誰か分からんか?』と返されるくらい、お店に対して安心感や安定感を求められる。それだけにやりがいがありますよ」と決意を新たにしている。(文:岡田敏一/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS)