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パリジャンを虜にする味 忠実に再現 コム シェ ミッシェル
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芳醇で濃厚で上品な味わいの「フォアグラ、マグレ鴨、イチジクのテリーヌ」は、ワイン好きには極上といえる究極のメニュー。「持ち帰り用に売ってほしい」との要望が多いのもうなづける=2014年6月11日、京都市中京区(恵守乾撮影)
京都市を東西に走るメーンストリート、御池(おいけ)通から柳馬場(やなぎのばんば)通を少し南下した洛中のまさに中心部に2009年4月、オープンしたフレンチレストラン「コム シェ ミッシェル」。フランス人観光客も驚愕(きょうがく)する本場パリのビストロの味を忠実に再現し、昨秋発売の「ミシュランガイド 関西 2014」では、星は付かないが調査員お薦めの「ビブグルマン」に選ばれた。以来、首都圏からのリピーターも増えるなど評価を高めている。
京都市伏見区出身のオーナーシェフ、大川隆氏(45)は、京都や大阪の名門ホテルで腕を磨いた後、パリ10区にある有名なビストロ「シェ ミッシェル」で3年間修業するなど、計約5年間、パリで過ごした。
家庭的な優しい味でパリジャンを虜(とりこ)にする「シェ ミッシェル」と、ここで活躍する凄腕シェフ、ティエリー・ブルトン氏の腕前に感銘を受けた大川氏は、帰国後、このお店の味を地元・京都で忠実に再現すると決意し、京都では最高の立地といえる現在の場所でのオープンを実現させた。
確かに、しゃれた外観と、1、2階合わせて18席というこじんまりした空間からは、不思議とパリの雰囲気が漂ってくる。大川氏のこだわりのなせる業だが、料理の方のこだわりも半端ではない。
最大の特徴は何といっても「シェ ミッシェル」と同様「極力、生クリームやバターを使わず、ブイヨンで仕上げるという本場・パリそのままのビストロ料理を心がけている」(大川氏)点だろう。
こうしたこだわりが口コミで広がり「ビブグルマン」を獲得したわけだが、大川氏いわく、顧客の8割は女性で30代~70代と幅広く、昨今の健康志向の高まりから「ご高齢の方々から『あっさりしているのにコクがある』と高い評価を受けている」という。
そんな料理の数々を早速、いただいた。まずは「フォアグラ、マグレ鴨、イチジクのテリーヌ」。
その名の通り、ロースト後にスモークした鴨に、赤ワインに1日漬け込み、少し煮込んだ乾燥イチジクと、コンフィ(低温で火入れ)したフォアグラを合わたテリーヌだが、鴨肉のジューシーさとフォアグラの濃厚さ、イチジクの芳醇な甘さが混然一体となった驚きの逸品。「うちの人気料理で、ワイン好きの方から『持ち帰り用に別売りしてほしい』との要望も多いですね」(大川氏)
続いて登場した「根セロリのポタージュ」も、フランス産の根セロリと玉ねぎのブイヨン、そして、生クリームではなく牛乳によってさっぱり感を醸し出す。魚料理「イトヨリのポワレ、黒オリーブソース、3種のお米添え」は、当日の朝に入荷した新鮮なイトヨリの素材の持ち味を、シンプルながらも最高の形で引き出している。
そしてメーンの肉料理「国産牛ほほ肉のブイヨン煮、エストラゴン風味」は、大川氏が「シェ ミッシェル」での修業で会得した玉ねぎ、ニンジン、セロリから取るブイヨンで牛ほほ肉をとろとろになるまで煮込んだ芳醇で味わい深い逸品。ディジョンマスタードの演出も憎い。
デザートの「パリブレスト」に加え、10時間かけて水出ししたこだわりの特製水出しコーヒーも素晴らしい。“ジャパニーズ・フレンチ”を期待して足を運んだフランス人観光客からの「まるでフランスのビストロで食事しているようだ!」との率直な感想は、文字通り最大級の賛辞ではないだろうか。(文:岡田敏一/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS)