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うま味たっぷり 赤身の国産牛 シトロン・ブレ

 京の台所、錦市場にほど近く、四条通から少し入ったところにあるレストランバル「シトロン・ブレ」。小さな間口に大きな窓のある真っ白い外観とは裏腹に、ウナギの寝床と呼ばれる京都独特の建築を生かした店内は、一歩足を踏み入れると存外に広い。お肉にこだわるレストランということもあり、店の奥から肉を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。

 最初は油で揚げる

 「昨年11月から、ステーキをメーンに、ワインなども国産にこだわる店として生まれ変わりました」と店長の矢野伴比古さん。牛肉は国産でも、いわゆる霜降りではなく、存在感のある赤身に力を入れている。この日は青森の短角牛と北海道の十勝ハーブ牛で、その魅力を引き出すという。

 焼いていただいたのは、十勝ハーブ牛のランプ部分。脂肪が少ないお尻の部位で、1カ月から40日間、じっくりと熟成させたものだとか。300グラムという大きさの、しっとりとした赤身は目にも鮮やか。

 鉄板で焼く、と思い込んでいたら、銅鍋になみなみと油が注がれる。鍋に火が入るのでは、と危惧するほどの強火で油を温め、かたまり肉を投入した。空いたスペースには牛脂も。

 「牛脂を入れると空気に触れる部分が少なくなって油の酸化防止にもなるし、クリスピーに揚がるんです。焼くとうま味が外に出てしまいますが、低温と高温の油で揚げることで、肉のうま味をぎゅっと閉じ込めるんです」とシェフの長野侯三さん。

 時には肉に油をかけながらじっくりと揚げてうま味を凝縮させていく。そうすることで内側にある油脂分も抜けていくという。一度鍋から取り出して肉を休ませ、油を替えてまた揚げる。大きなものになると、3度はこの工程を繰り返し、最後はオーブンで焼き上げる。

 シンプルに塩コショウ

 味付けはフレンチならではの凝ったソースかと思いきや、塩コショウのみといたってシンプル。たっぷりのフライドポテトが添えられた「ステーキフリット」は、パリっ子たちが週に一度は好んで食べるというビストロの定番料理だ。

 大振りにカットされたステーキは内側がほんのりバラ色のミディアムレア。一口大に切って頬張ると、最初はがつんとコショウの辛みが舌を刺し、かみしめるごとに肉汁があふれ出てくる。かめばかむほど肉本来の甘味を感じる。口の中でとろける軟らかな霜降り肉とは対極の味わいだ。

 「脂身が少ない赤身だからこそ胃もたれせず、たっぷりの量を召し上がっていただけるんです」と長野シェフ。フランスの名店「ル・セヴェロ」の姉妹店で1年間コックとして働きながら腕を磨き、肉の扱い方などを学んだ。

 ディナーでは、100グラムあたり1500円からと、それなりの値段だが、お昼のランチタイムなら、国産牛のステーキフリットをはじめ、ハンバーグや炙りステーキ丼も気軽な値段で楽しめる。

 ワインも国産にこだわり

 肉料理に欠かせないワインも国産を取りそろえている。日本のブドウどころである山梨はもちろん、地場産の京都、滋賀や栃木、富山、北海道や岩手といった珍しい産地のものも。食前酒にふさわしいスパークリングから白、赤、ロゼなどもボトル1本3000円台から6000円と、手頃なものが多い。国産ワインといえば、甘くフルーティーな味わいが多かったが、近頃は若手醸造家たちが、酸味も少なく、食中酒として使える辛口を作っているそうだ。

 もちろん肉料理だけではなく、レストランバルというだけあって、テリーヌやパテなどアラカルトメニューも盛りだくさん。ふらりと立ち寄り、グラスワイン1杯と前菜だけ、という立ち飲み的な使い方も可能だ。繁華街に近いこともあり、更けゆく古都の夜が楽しくなりそう。(文:木村郁子/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS

 ■シトロン・ブレ 京都市中京区麩屋町四条上ル桝屋町514コリスアルタス1階、(電)075・708・6664。ランチタイムは正午から午後3時30分、ディナータイムは午後5時30分から11時30分。アラカルトがメーンだが前菜、メーン、パン、デザートにコーヒーがついたコースメニュー(3200円)も。

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