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美しい芸術品 四季を味わう懐石 桜鶴苑
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コース料理のハイライト「宝楽焼き」。栗、マツタケ…の秋尽くしが大人の味わいを楽しませてくれる=2014年9月22日、京都市左京区(恵守乾撮影)
四季折々の風情を醸す約1200坪(4000平方メートル)の日本庭園を有し、“芸術品”の名にふさわしい京懐石料理の品々が味わえる「桜鶴苑」(おうかくえん)。食欲の秋には見事な紅葉を愛でながら、季節感満載のコース料理につい箸も進む。観光シーズンは行楽客でにぎわう南禅寺の西に位置するが、ひっそりと佇む玄関をくぐると静寂と美食の世界に誘ってくれる。
自慢の庭園は、近代日本庭園の先駆者とされる庭師、七代目小川治兵衛(1860~1933年)が手がけたとされる東山の借景を生かした純和風庭園。モミジなどの植栽が四季の移ろいを感じさせてくれる。
最初に運ばれる先附(さきづけ)は「柿胡桃和え」。赤く色づいた柿の葉の上に柿の実をくり抜いた器が載せられ、中に甘酢に漬けた短冊状の柿とクルミが混在。てっぺんにはさりげなくキャビアと金粉が添えられ、食欲をそそる。
碗物は土瓶蒸し。手作りの土瓶の蓋を開けると、マツタケとハモ、クリ、三ツ葉がハモの骨のエキスをとったコクのあるカツオだしに沈む。
秋をイメージした八寸も彩り豊か。2度目の登場となるマツタケはツルムラサキの葉のお浸しとの組み合わせ。鮮やかなピンク色のサーモンは、柿の実に見立てた丸いすしに変身。さらに栗の渋皮煮や銀杏、シメジなども盛りつけられ、大皿の上は“秋全開”だが、よく見るとシメジの根元には煎ったカラスミがあしらわれ「今、掘り起こしてきたばかりで、まだ土がついている様子をカラスミで表現した」(三島竜二料理長)という芸の細かさに脱帽させられる。
向附(むこうづけ)の器は一見ガラス製のようだが、実は桂むきにしたダイコン。周辺にはモミジの葉の形に切り取られたニンジンが散り、秋の庭を連想させる。容器の中には脂の乗った戻りカツオのたたきが盛りつけられ、ショウガじょうゆで味わうと絶妙だ。
焚物(たきもの)は海老芋が木の葉の形に、黄色いサツマイモはイチョウの葉の形に切りそろえられ、白味噌で溶いたかつおとじゃこだしに浮かぶ。添えられたカラシがピリリと味を引き締める。三島料理長は「粘り気のある大阪・富田林産の海老芋を好んで使う」そうだ。
「宝楽焼き」はコース料理のハイライトだ。酒、みりん、しょうゆを混ぜた幽庵地(ゆうあんじ)に漬け込んだカマスでマツタケをくるりと巻いた包み焼きをはじめ、オレンジなどを加味したしょうゆを3度も塗った京都牛の柑橘焼き、カツオの内臓の塩漬けを塗りながら焼く車エビの酒盗焼きなど、「大人」の味わいを存分に楽しませてくれる。
鍋物は弾力のある淡路産茂魚(あこう)の身のしゃぶしゃぶ。くつくつと煮たカツオのだしにくぐらせて口に運ぶと確かな歯応えが楽しめる。一緒に提供される九条ネギやエノキはさくさく感、京豆腐は柔らかく、食感がそれぞれに異なる。
すしは「サンマの炙(あぶ)りにぎり」。酢締めして握った後にバーナーで炙ったサンマは香ばしさを感じさせる。留め椀は鯛のにゅうめん。奈良・三輪産の細い素麺に酒蒸しにした鯛の身が乗る。
デザートはナンキンプリンと俵モナカの栗あん。裏ごししたナンキンに卵と牛乳を混ぜ合わせカラメルソースをかけた甘党メニューを口にすると、ホッと一息つける。
開業10年目。三島さんは「老舗料亭が多い中、創意工夫を凝らして見た目で四季が分かる料理を提供したい」と意欲を示す。支配人の前田裕代さんも「懐石というと敷居が高そうに思われがちですが、老若男女誰にでも気軽に味わってもらえる店作りを目指したいですね」と笑った。(文:巽尚之/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS)