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手間暇惜しまぬアイデア中華 星ヶ岡
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ゼラチン質たっぷりのフカヒレの姿煮(手前)。土鍋で炊いたご飯にかけてスープも残さず味わえる=2014年9月2日、京都市下京区(竹川禎一郎撮影)
上海料理をベースにした中国王朝料理のレストラン「星ヶ岡」(ほしがおか)。その名称は美食家として知られる北大路魯山人らが大正時代に東京で開いた料亭「星ヶ岡茶寮」に由来するが、星ヶ岡は京都にオープンして6年。炊きたてのご飯と一緒に味わうゼラチン質たっぷりの気仙沼産フカヒレの姿煮や、もちもちの豚肉と和牛を2種類のスープで楽しむ“ツーウェイ”の中華鍋など、気鋭のシェフ・山田雅さん(39)のアイデアで美食メニューが続々と生まれつつある。
前菜は色彩豊かな9種類の献立が盛りつけられたプレート。赤と黄色のプチトマトに挟まれたリコッタチーズには細かく刻んだ緑ザーサイが混ぜられ食感に変化を楽しませてくれる。
和牛ヒレ肉のパパイヤ巻きを一口で頬張ると、ほんのり甘いパパイヤと牛肉の味覚が渾然一体となって広がる。圧力鍋で軟らかく煮たアワビにはネギ塩ソースがかけられ、キンモクセイの花のシロップ漬けで味付けされた冬瓜には甘いイチジクのソースで仕上げられている。
柿の実とサツマイモ、エリンギの甘酢漬けは素材の持つ甘みを中和する酸味がちょっぴり刺激的だ。それぞれに手間暇を惜しまず工夫されたアイデア料理の数々には脱帽するしかない。
「和牛バラ肉の四川風煮込み」は麻婆仕立て。3時間以上コトコトと煮込んだ肉はとろけそうに軟らかく、脂身もしつこくなく味わえる。付け合わせに大根、赤カブ、カボチャや伏見トウガラシなど季節の野菜が添えられ、バラ肉との相性もいい。
「オマール海老のチリソース煮込み」には、特製チリソースに“技”がある。豆板醤(とうばんじゃん)と自家製ラー油でつくったチリソースには米麹が混ぜ込まれその甘みが持ち味に。隠し味の溶き卵がチリソースの辛さをマイルドに包み込む。オマール海老の身にソースをたっぷりとつけて口に含むと、甘辛いソースの味わいが心地よく、しばらくするとピリッとした辛さが舌を刺激する。クセになる不思議な一皿だ。
山田シェフの一押しが「フカヒレの姿煮」。皮と骨がついたまま乾燥させた気仙沼直送のフカヒレを、紹興酒やオイスターソースを加えたしょうゆベースの濃厚なスープで煮込んだ逸品。
ゼラチン質がたっぷりで、とろとろのスープもレンゲですくい取ってつい飲み干したくなる。そこで、登場するのが京都・丹後産のコシヒカリを土鍋で炊いたご飯。軟らかい炊きたてのご飯にフカヒレの身とスープをかけて味わうと“二度おいしい”が実感できる。
「中華しゃぶしゃぶ」は秋から冬にかけての人気メニューで、2日前までに要予約だ。松阪牛ならぬ弾力ある「松阪豚」と和牛を、2種類の出汁(だし)に浸す。
白い出汁はあっさり味のシジミのスープ、茶色い出汁は甘みのある台湾のしょうゆがベース。ピンク色をした中国野菜の大根やニンジン、水菜、京ユバなども一緒に出汁にくぐらせると、さながら味覚散歩の世界。締めに細い中華麺を湯がくとスープが絡みつき上品な味だ。
シナモンの香りが漂う「モナカのデザート」はラズベリー、ブルーベリーなどを組み合わせたバナナムースやキャラメルアイスを最中の皮で挟み一気に口の中へ…。「お客さんから『これだけで商品として売れるよ』と言われる」(山田シェフ)というのもうなずける。
紹興酒やワインなども取りそろえ、「カップルや家族、接待、女性同士などあらゆる層に親しまれている」(森川洋一マネージャー)そうだが、知名度アップに向け、さまざまな企画も。敬老の日(9月15日)に合わせ、60歳以上のシルバー4人が集まれば料金が40%オフになるブッフェ企画も行っている。(文:巽尚之/撮影:竹川禎一郎/SANKEI EXPRESS)