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なじみ深い「王道」の逸品ぞろい 中国酒家 黒猫軒
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ハモの紹興酒甘酢ソース(コース料理より)。淡泊なハモの唐揚げと素揚げした野菜を甘酢ソースでさっぱりといただく=2014年9月1日、京都市北区(恵守乾撮影)
京の観光名所、北野天満宮や金閣寺のほど近くに店を構える中華料理店「中国酒家 黒猫軒」。真っ白いのれんとランタンのあかりに照らされたレトロな外観は、思わず見過ごしてしまいそうなほどひっそりとしたたたずまい。そんな隠れ家的雰囲気は大人の男女にふさわしいお店だ。蔵に使われていたという木の扉をがらりと開けると、白と茶のモダンな雰囲気で出迎えてくれる。
「日本人になじみ深い広東料理を忠実に作っているだけなので、とっぴなものは何もありませんよ」と、はにかむように笑う店主の亀山貴さん。
例えば「海老と季節野菜の炒め」。日本人なら誰もが大好きな海老とふんだんに野菜がいただける一皿だ。海老はさっと熱湯で湯通しした後、さらに高温の油で油通し。ニンジンやブロッコリーなど火の通りが悪い硬い野菜たちもさっと油通しし、ショウガ、エシャロットなどの薬味を炒め、野菜と海老を投入…。
すべて中華鍋ひとつで行うが、ガス火の火は鍋に入りそうな勢い。巧みに火を操りながら中華鍋を振る。
ニンジンと海老の控えめなオレンジ、パプリカの黄色やブロッコリーの緑。あたたかみのある器に美しく繊細に盛られている。海老はぷりぷりの食感を残しつつ、旬野菜もしゃきっとしたかみ心地で火の通り具合も絶妙だ。
「湯通しや油通しをすることで食材の持つ味わいを最大限に生かし、軽く仕立てることができるんです」と亀山シェフ。
また、京の夏を代表する食材といえばハモ。そのハモの淡泊な味わいを生かした「ハモの紹興酒甘酢ソース」は、ハモのから揚げと素揚げした野菜を甘酢ソースでさっぱりといただく逸品。涼しげなガラスの器に、からりと揚がったハモに素揚げした甘長トウガラシとナス、パプリカ。ここにさらりとした甘酢ソースをジュッと回しかける。
熱々はもちろんだが、少し冷ましていただけば野菜とハモがほんのりと甘酢に浸され、なお一層味が染み込み味わいの変化が楽しめる。
「ニラ入り焼き春巻き」は、もっちもちの皮にごろりとした存在感のある海老、ざっくりと切られてしゃっきりとしたニラの食感に驚く点心。春巻きは一度せいろで蒸して焼くことで楽しい食感が生まれるという。
また、中華に欠かせない存在といえば紹興酒だろうか。度数が低く冷酒でいただくものをはじめ、日本でもなじみが薄い「孔乙己(コンイーヂー)」や「朱鷺黒米(トキヘイミー)」などプレミアムなブランドをそろえるこだわりようで、料理が進むこと請け合いだ。
亀山シェフが中華料理人の道に進むきっかけは「外で食べるチャーハンはなぜぱらりとしているのか」という疑問だったという。京都ブライトンホテルをはじめ、長らくホテルのレストランなどで修業したが、2年前に黒猫軒をオープン。宮沢賢治の名著「注文の多い料理店」の“山猫軒”を思わせる店名は当時、自宅で飼っていた黒猫からいただいたそう。
駅や観光地から少し離れているため、店に通う常連客はほとんど地元というが、昨冬にグルメ雑誌で表紙を飾ったこともあり、同業の料理人が通うほど人気は高まる一方。
中華料理の楽しみ方は、かしこまらずに大人数でわいわいがやがやと取り分けながらいただくこと。日常使いから、もちろんハレの場まで、中華の王道を味わいに、少し足を延ばしてみてはいかがだろうか。(文:木村郁子/撮影:恵守乾/SANKEI EXPRESS/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税抜きです。