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使い込むほど味が出る家具 TRUCK
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大きな窓から太陽が差し込む明るい店内。無垢材が使われたオリジナル家具が出迎えてくれる=2014年6月16日、大阪市旭区(村本聡撮影)
わざわざ出向いて行きたい場所にある家具店、それがオリジナル家具を製作するTRUCK。全国のインテリア好きには言わずとしれた名店といえる。奇をてらわず流行を追わないそのデザインは、普通の暮らしに根ざしたものだけが作られる。カフェも併設した工房とショップは緑の葉を青々と茂らせた大きな木々に囲まれ、大阪市内とは思えない自然に包まれている。
階段を上って扉を開けると、たくさんの家具が出迎えてくれる。例えば、工房を立ち上げて以来のロングセラーである「FKソファ」。レトロな雰囲気を醸し出すコーデュロイの生地が張られた3人がけソファはフェザーがたっぷりと詰め込まれており、一度座れば立ち上がりたくなくなるほどの心地よさ。
体がほどよく沈み込み、ふんわり優しく包み込まれるような言葉にしがたい感覚。このソファで映画を観たら、きっとうたたねしてしまいそう。訪れる人が何度も座り心地を試すためか、クッション部分はくたびれている。
そのソファの表情は、幾多の苦難を乗り越え、人生経験を積み重ねた熟練工の佇(たたず)まいを思わせる。
「自分が“こんな家具が欲しい”という思いで作っています。デザインは元々、そこにあったような物を作りたいと思っています。そのため、自分で何カ月も、ときには1年以上使って、納得いくまで作り直してから、店頭に並べます」とオーナーの黄瀬徳彦さん。
背の高い食器棚「GATTO カップボード」は、公私共に黄瀬さんのパートナーである唐津裕美さんの意見を取り入れてできあがったものだ。大皿もすっぽり収納できる余裕のある奥行きに、アイアンが仕込まれたガラス扉はソフトフィルター的な役目も果たす。
背が高く奥行きもあるので、踏み台を使ってしか一番上のものは取り出せないが、その不便もまた楽しい。使い込まれた感じがするナラ材の無垢板を使い、節や荒れもいい感じで、抜群の存在感を醸し出す。木漏れ日が差すリビングにふさわしい味わいだ。
一見、無骨な感じがする家具の数々は「年月を経て表情が変わっていくのが好き」という黄瀬さんのこだわりから、あえて木材や革に過剰なコーティングはされていない。
日光が直接あたる場所に長らく置いておけば、革張りの椅子は色あせてくるし、反対に毎日使い続けていると飴色に変わり、使い込んだ感じになる。その表情を楽しめるかどうかが、好みの分かれるところ。
テーブルの天板に使われる木も、通常なら欠品として取り除かれる節や割れも味わいとして生かしている。こうした逆転の発想が生んだデザインの数々は多くの人を魅了し、今や海外にも顧客を持つ。
隣接するカフェ「Bird」では、TRUCKのテーブルやソファ、チェアが使われているので、使い心地を試すには最適。何年も使い込まれたテーブルや椅子で食事が楽しめる。何度でも何時間でもいたいと思わせる家具店。大きな買い物だからこそ、こだわりたい。そんな人生の相棒的存在の家具がきっと見つかるだろう。(文:木村郁子/撮影:村本聡/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税別です。