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彩りも美しいフランス風串焼き ブロシェット
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「前菜ミニブロシェット五種」(1180円)。自家製ピクルスをはじめ、クリームチーズとレモン、ケイパーとデイルを刻んだものがスモークサーモンに巻かれている串もあり、見た目も味わいも楽しい冷製の前菜
フランスの串料理「ブロシェット」。それをそのまま店の名に冠した串焼き料理店が京都の繁華街、烏丸御池近くにある。ワインの産地、ボルドー地方では、ブドウの収穫後に行われる剪定(せんてい)作業で出た枝などを燃やすとき、一緒に肉や野菜を刺してあぶって食べたという。そんな豪快な料理に端を発するフランス風串焼きとはどんなものだろうか。わくわくした気持ちで木の扉を開いた。
店内にほのかにたちこめるのは、炭火で焼く香ばしい香り。焼きを担当する西川鎌一さんは、串焼き料理店で修業しながら、西洋の雰囲気をまとわせる串料理店を開きたいと思っていてブロシェットに巡り合ったという。3年前に店をオープンする前にはフランス各地のブロシェットを見聞したそうだ。
フランスでは30センチほどの長い金串を使って、肉から野菜、果物にいたるまで串焼きにしたバーベキュースタイルがほとんど。「ただ、そのまま取り入れるより、日本人向けにサイズを小さくして、和食に通じるような彩りの美しさと、丁寧な下ごしらえを心がけています」と西川さんはいう。
例えば、「前菜ミニブロシェット五種」は、白ワインやワインビネガーにつけ込んだ自家製ピクルスの串をはじめ、カマンベールチーズとアンズ、プチトマトを巻いた生ハムの串や、アボカド、クリームチーズを巻いたスモークサーモンの串が並び、なんともかわいらしい。コースでいえば、冷製の前菜というところか。
「美しくお皿に並べるより串に刺して出すと、驚きがあるみたいなんです。うちの串は白・赤ワインと好相性なんですが、辛口のロゼワインもお薦めですね」とソムリエの資格を持つ西川さん。
イベリコ豚の串は赤ワインと果物のソース。エゾジカはクランベリー、ラズベリー、ブルーベリーの3種を使ったベリーソース。イトヨリの串はオリーブ仕立てのタプナード。エビとアボカドの串はロメスコソースといった具合に、串によってかけるソースを工夫する。そのうえ、肉や魚介に野菜を合わせたヘルシーさは、女性客の心をがっちりとつかんで放さないというのもうなずける。
「隠れメニューの串がひとつあるんですよ」といたずらっぽく笑う西川さん。地鶏をブドウの枝でスモークして香り付けした一品だ。ブドウの枝は丹波ワインのワイナリーから譲り受けたもので、剪定の季節にのみ出るため数に限りがあり、だから裏メニューなのだが、今回は特別に出していただいた。
ブドウの枝を炭に投入してしばらくすると、豪快な炎が上がる。その煙をまとわせながら地鶏を網に載せてじっくりと焼き上げる。ゲランド産の岩塩をぱらっとふりかけて、添えられたオリーブオイルに少し浸してシンプルにいただく。スモークされた香ばしさが口の中にいっぱいに広がった。一口かみしめると、外はパリッと焼き上げられ、中は軟らかで何ともジューシー。
「炭焼きの仕事をして10年になりますが、その日の湿気や気候によって火の起こり具合が思ったのと違ったりするので、日々勉強です」と西川さん。
また、仔牛のフィレ肉のグリルやフォアグラとリンゴのコンポートなど、メーンにふさわしい串も手頃な値段。フレンチのコース料理のように楽しむこともできるし、2軒目や3軒目といった使い方もできる。
冬の京野菜である蕪(かぶら)などの根菜から、菜の花やコゴミといった春野菜もふんだんに使われている串は、季節の移り変わりを目と舌で楽しめそうだ。一つ一つ丁寧な下ごしらえからできあがる串は、芸術的な一皿ともいえる。烏丸御池という立地もあり、その味にひかれて通う人々の顔ぶれは、近くの会社員から噂を聞きつけた観光客までさまざまだ。(文:木村郁子/撮影:恵守乾/SANKEI EXPRESS)