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一皿一皿が絶品 「夜行性」の隠れ家 イル・ジェーコ
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自家製テリーヌ(800円+税)は、仕込む度に食材や配合を変えるという。甘酢を使用したピクルスはやさしい酸味=2014年12月10日、京都市下京区(志儀駒貴撮影)
深夜まで営業している店を探すのは案外難しい。まして、おいしい料理を、となると…。四条烏丸界隈で見つけ、ふらりと入ったイタリア料理店「イル・ジェーコ」は深夜2時まで営業の店だった。しかも出された料理の一皿一皿に何度「これは!」と感嘆したことか。隠れ家的存在でありながら、実は情報通から高い評価を得ている店であることを知った。
「イル・ジェーコ」は昨年2月にオープン。西洞院通沿いのビルの地下1階にあるので見過ごしてしまいそうになる。店内に入ると、右側がオープンキッチンとカウンター席、左側の壁際にテーブル席が。予想以上に広々とした空間だ。
まずは前菜の「鮮魚のカルパッチョ」。ぷりぷりのカンパチに舌鼓を打つ。続いて牛ミンチ、豚ミンチ、豚レバーの「自家製テリーヌ」。どっしりしっかりした肉の味わいにスパイスが効いていて、ワインが進むこと請け合いだ。「仕込む都度、食材や配合を少し変えています。毎回少し違った味や食感になっていると思います」とオーナーシェフの矢守保則さん。
肉料理は「丹波牛ランプのタリアータ」を。タリアータはイタリア語で「切る」の意で、焼いた肉を切り分けたイタリアの代表的な料理。かむほどに肉のうま味がジュワっと広がる。肉はもちろん、添えられた野菜の焼き加減も絶妙で、思わず「このシェフ、ただ者ではない…」とつぶやいてしまったほどだ。
「普通においしく提供しようとしているだけです。こだわりが過ぎたり、オリジナリティーは特に意識していません」と謙遜するが、この「普通においしく」のレベルが高いのだ。「いい素材を使い、素材の味を引き出すような調理法で、お客さまの口に入る瞬間が最高の状態であるように心がけています」
「美肌豚ソーセージとカボチャのピュレのリゾット」は、ほんのり甘いカボチャの風味に、ソーセージの塩気と食感が効果的、ミックススパイスがいいアクセントとなっている。やはりパスタも食べたいと「山嵜さんのトマトのスパゲッティ ポモドーロ」をオーダー。
矢守さんが絶賛する“高知県日高村の山嵜さんが栽培するトマト”を使ったトマトソースは言葉をなくすほどのおいしさ。「甘みと酸味と香りのバランスが抜群なんです。このトマトをいろんな形で味わってもらいたいので、パスタソースだけでなくドレッシングなどにも使います」
メニューには、当日のおすすめ食材と「お好みに合わせて調理いたします」の添え書きがある。ソテーでもパスタでもリゾットでも対応可能。いずれは料理名ではなく食材のみを記載したメニューにしたいという。メニューを固定せずに旬の食材を生かしたいという思いからだ。
「イタリア人は自分の土地を愛し、土地のものが一番おいしいと思っています。自分がおいしいと思う日本の食材を使い、いかにイタリア料理にするかが“イタリア人の心で作る”ことに通じると考えています」
店名の「イル・ジェーコ」はイタリア語でヤモリの意。自分の名前(ヤモリ)と夜行性のヤモリ、そして夜遅くまで開いている店とをかけてつけた。「仕事で遅くなった人がしっかり食事をとれる、あるいはワインと軽い食事を、そして大勢でもおひとりでも…という使い勝手のいい店でありたいですね」
自分だけの“隠れ家”であってほしいと思いつつ、つい自慢したくなる。そんな店だと多くのファンが口をそろえて言う。私もそのひとりになった。(文:杉山みどり/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)