SankeiBiz for mobile

ほっこり和み、雰囲気にも味わい さらさ西陣

 ≪歴史感じるたたずまい≫

 京の北の観光地のほぼ真ん中、鞍馬口の駅から歩いて十数分、アクセスとしては少し不便なところにあるカフェ。大きな木が茂って見え隠れする建物は、威風堂々としたたたずまいを見せる。それもそのはず、「さらさ西陣」は、国の登録有形文化財「旧藤ノ森湯」を利用したカフェ。外観は宮崎アニメの傑作「千と千尋の神隠し」(2001年)の風呂屋のような、唐破風の屋根がまず目に飛び込む。ガラガラと扉を開ければ、高い格天井に、壁はブルーグリーンの和製マジョリカタイルの全面張り。ちょっと長湯、ではなく長居したくなる雰囲気だ。

 銭湯リニューアル

 「男湯と女湯の敷居を少し削っていたりと、内装は少し触っていますが、当時の形状をほぼ生かしています」とは店長の山口洋平さん。

 旧藤ノ森湯は1920年代に建てられ、90年代に営業を終えた銭湯だが、中京区を中心に展開するカフェ「さらさ」がリノベーションし、2店舗目のカフェとして2000年に生まれ変わった。

 元銭湯ということで、湯船はいずこへ、と思っていたら、テーブルとテーブルの間の床部分をひょいと持ち上げてくれた。中をのぞき込めば床下にはやや小さめの浴槽が2つ。一般的な銭湯に比べると意外に小さい。

 山口さんによると、江戸は先に体を洗い、大きな湯船で温まるが、関西はかけ湯をしてから浴槽に身を沈める。温まったところで体を洗い、そしてまた湯に入る。そのため、大きな湯船より、ほどほどの大きさの湯船が好まれているのだとか。

 ご飯いつでも

 さて、肝心のカフェメニューは、というと、ケーキなどのスイーツ類をはじめ、丼やカレー、サンドイッチにピザと盛りだくさん。

 この日のランチは「豚バラ肉の五目中華煮込み」。白菜、ニンジン、キクラゲ、シシトウの彩り野菜と薄切りの豚バラ肉をあんでとじ、たっぷりの白髪ネギを散らしている。ご飯とサラダ、タマネギと水菜のおみそ汁、アジのフリットの一品も付く。バランス良く、ご飯が進むこと請け合いだ。

 一日中ご飯が食べられるようにと、開店以来、どの時間帯にも食事メニューを提供している。例えば、午後3時からいただける夕ごはんメニューで女性に人気なのが「アボカド・トマト・塩こんぶのおぼろ豆腐丼」。ほかほかのご飯にクリーミーなアボカドとふわふわの豆腐、そしてトマトを散らしている。

 「このカフェは、まず建物ありきなので、メニューにこだわらないことが実はこだわりなんです。食べておいしいのは当たり前。京都に根付いた喫茶店という文化を若い世代にも知ってもらいたいと、若者メニューから昭和を感じさせるメニューまで網羅しているんですよ」と山口さんは笑う。

 王道 喫茶メニュー

 喫茶店の王道メニューである「ナポリタン」に「オムライス」。ドリンクにはコーラとカルピスを割った「キューピッド」まで。喫茶店全盛の昭和30~40年代にタイムスリップしたかのようだ。

 喫茶文化で忘れてはならないのがコーヒー。香り高い自家焙煎のコーヒーも京都人に好まれる酸味と苦みが濃い味ではなく、十人中八人がストレートで飲みやすいと思えるコーヒーに仕立てるため浅煎りにしているそうだ。

 ちょうど取材日には月に一度のライブが行われるとあって、夕ごはんの時間帯は閉店。それでも旅行ガイド「地球の歩き方」など多数の本や雑誌に掲載されていることもあり「少し中を見せてもらっていいですか」とカメラ片手にやってくる人が絶え間なく訪れる。

 山口さん自身もこの建物と雰囲気が大好きで、学生時代は通い詰めていたそう。ソファに身を沈め、アンティークと呼ぶにふさわしい店内を眺めていると、昭和から時間に追われる現代に戻るのがつくづく嫌になってくる…。(文:木村郁子/撮影:恵守乾(えもり・かん)/SANKEI EXPRESS

 ■さらさ西陣 京都市北区紫野東藤ノ森町11の1、(電)075・432・5075、HP(cafe-sarasa.com)。営業時間:正午から午後11時(LO10時)、水曜日定休。平日ランチ、週末ランチとも週替わり。夜は一品メニューも多数。

※価格はすべて税込みです。

ランキング