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【ウクライナ情勢】重火器撤去、互いに拒否 もろい「合意」 期限経過も戦闘続く

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【ウクライナ情勢】重火器撤去、互いに拒否 もろい「合意」 期限経過も戦闘続く

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2月16日、ウクライナ東部デバリツェボ西方の町で、破壊されたウクライナ軍の軍用車の脇を歩く住民=2015年(ロイター)  15日に停戦が発効したウクライナ東部の紛争は17日午前0時(日本時間17日午前7時)、ウクライナ軍と親ロシア派武装勢力の双方が、停戦合意に定められた前線からの重火器撤去を開始する期限を迎えた。しかし停戦後も戦闘が続き、互いに一方的な撤去を拒否。17日正午の段階で撤去の動きは伝えられていない。東部の要衝デバリツェボでは17日、激しい戦闘が行われたとみられ、停戦の行方には早くも暗雲が立ちこめている。

 ウクライナ軍当局は16日、停戦後も親露派から100回以上の攻撃を受けたと指摘。停戦が守られていない状況では重火器撤去は困難と表明する一方、親露派も一方的な撤去はできないと主張していた。

 インタファクス通信によると親露派幹部は17日、親露派が政権側部隊の6000~8000人を包囲していたデバリツェボの大半を制圧したと発表した。警察署や鉄道駅も占領したという。親露派側はウクライナ軍側に多数の死傷者が出たと述べており、激しい戦闘が行われたとみられる。親露派はまた、数十人のウクライナ軍兵士が投降したと発表した。

 ウクライナ軍当局は17日、これらの情報について「確認できていない」としている。

 親露派は、デバリツェボは既に支配領域だとし、停戦合意の対象外だと主張してきた。デバリツェボで包囲されたウクライナ軍兵士に対して武器を捨て撤退するよう要求しているが、軍側は拒否している。(モスクワ 黒川信雄/SANKEI EXPRESS

 ≪もろい「合意」 期限経過も戦闘続く≫

 ウクライナ東部の紛争は17日、政府軍と親露派武装勢力の双方が重火器撤去の開始期限を守らないなど、和平合意のもろさが早くも露呈する形となっている。交戦の続く東部の要衝デバリツェボをめぐっては「停戦ライン」をめぐる解釈すら食い違い、和平合意に基づく停戦監視の機能も弱い。親露派への軍事支援を非難されるロシアが紛争の「当事国」であることを認めず、合意の履行に何ら責務を負っていないことも停戦を困難にしている。

 問題のデバリツェボは、東部2州の親露派支配地域を結ぶ鉄道の結節点。親露派が政権側部隊の数千人を包囲した状態で15日の停戦発効を迎えた。親露派は、包囲網内は自らの支配領域であり、停戦ラインにはあたらないと主張して戦闘停止を拒否。政府軍はデバリツェボを「作戦拠点だ」として「包囲」を否定し、親露派の停戦違反を非難している。

 昨年9月の前回和平合意は、要衝のドネツク空港をめぐる戦闘再発を契機に破綻した。今回も、デバリツェボの状況が和平プロセスの先行きを大きく左右することになりそうだ。

 ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国首脳が12日にまとめた和平合意は、昨年9月と同様に、欧州安保協力機構(OSCE)が停戦監視を担うとした。しかし、OSCE監視団には平和維持部隊のような強制力がなく、デバリツェボでの活動も親露派に拒否されているありさまだ。

 今回の和平合意は、ウクライナの主権尊重や領土保全を確認する一方、ウクライナには、親露派地域に「特別の地位」を付与する恒久法の制定などを求めた。東部に高度の自治権を持たせ、ウクライナの内政・外交に影響力を保持する-というプーチン露政権の思惑を体現する内容だ。

 他方、合意には「外国の部隊や武器の撤収」という条項もあるが、プーチン露政権は親露派支援を否認しており、何の義務も負わないとの立場を貫いている。ウクライナが合意事項を履行しなかった場合、ロシアは和平協議で「後ろ盾」となった独仏両国を非難する構えだとも指摘されている。

 昨年5月に「独立」を宣言した親露派も、ロシアとの対決姿勢を強めるウクライナ政府も、和平合意の内容には不満を残している。死者5300人以上を出した紛争が終結に向かうかは全く予断を許さない。(モスクワ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

 ≪東部の情勢悪化に「重大な懸念」≫

 米国務省のサキ報道官は16日、ウクライナ東部の紛争をめぐる停戦合意にもかかわらず東部ドネツク州デバリツェボ周辺の情勢が悪化しているとして、「重大な懸念」を表明する声明を発表した。

 声明によると、ロシアの支援を受けた親ロシア派武装勢力は攻撃を続行。直近の24時間でウクライナ側に129回の砲撃を加え、5人が死亡、25人が負傷した。デバリツェボから負傷者を避難させる車列に対する攻撃もあったという。停戦監視に当たるOSCEの監視団やウクライナ政府からの情報を明らかにした。

 また、親露派勢力が停戦を拒否し、OSCE監視団の安全を保証していないとして「停戦を脅かす」と非難。ロシアからの軍事物資の流入を注視しているとし、ロシアと親露派勢力に攻撃の停止を求めた。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS

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