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【ウクライナ情勢】「近づくな」 やまぬ砲弾、家屋破壊も

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【ウクライナ情勢】「近づくな」 やまぬ砲弾、家屋破壊も

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破壊された街を進む親ロシア派武装組織「ドネツク人民共和国」の兵士=2015年2月17日、ウクライナ・ドネツク州デバリツェボ近郊(ロイター)  ≪ウクライナ 政府軍が要衝撤退、親露派も重火器撤去着手≫

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(49)は18日、親ロシア派武装組織との攻防が続いていた東部ドネツク州の要衝デバリツェボから政府軍が撤退を始めたと表明した。ロイター通信が報じた。ウクライナ国家安全保障防衛会議の報道官は、政府軍の約8割が現地からの撤退を完了したと明らかにした。近く全軍が退く見通し。

 一方、親露派組織「ドネツク人民共和国」は18日、和平合意に従い、前線からの重火器撤去に着手したと発表した。ウクライナ政府側は確認していない。

 親露派は18日までにデバリツェボをほぼ制圧。支配領域を広げた上で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(62)とウクライナのポロシェンコ大統領がドイツ、フランス首脳の仲介で達成した和平合意を履行する姿勢を示した。

 親露派は停戦発効以降もデバリツェボを守る政府軍を包囲し攻撃。包囲された政府軍は数千人規模とされる。タス通信によると親露派幹部は、政府軍の数百人が18日に武器を置いて投降したと述べた。

 プーチン氏は17日、デバリツェボで包囲されているウクライナ軍に対し、武装解除した上で撤退するよう要求。事実上、停戦発効後の親露派の攻撃を容認していた。

 これに対しポロシェンコ氏は17日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)との電話会談でデバリツェボでの交戦を「停戦合意への攻撃だ」と非難した。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪東部ルポ≫

 「近づかない方がいい。攻撃が続いている」。17日に市街戦に突入したウクライナ東部ドネツク州の要衝デバリツェボ周辺の危険な状況を訴えるウクライナ軍兵士。近くの町では軍の車両が往来、道路に設けられた検問所では、銃を持った兵士らが監視の目を光らせ、依然、高い緊張状態が続いていた。

 ドネツク州スラビャンスクからデバリツェボに延びる道路からは遠くまで広がる雪原が見えた。気温は氷点下。屋外に立つと、手や足が寒さでしびれ、すぐに感覚が失われた。

 道路にはブロック片を積み上げたり、戦闘車両を停車したりして検問所が幾つも設置され、銃を抱えた兵士らが通り掛かる車を止めて点検していた。

 デバリツェボに近い町アルチョモフスク。砲弾とみられる「ドーン」と重く低い音が断続的に響く。地面が揺れるような感覚に襲われる。緊張がいっそう高まる。「昨日デバリツェボにいた。(親露派武装組織の)砲弾などによる攻撃があった。今日も攻撃が続いている」。アルチョモフスクで、ウクライナ軍の男性兵士(49)が厳しい口調で言った。

 ウクライナ東部の停戦合意は15日に発効したが、兵士によると、デバリツェボでは親露派の攻撃で家屋などに被害が出ているという。今後も攻撃が続くようであれば「(ウクライナ政権側にも)反撃する権利がある」と主張した。

 しかし実際に反撃に出れば、親露派側の攻撃が激化し、最前線の現場に立つこの兵士らが危険な状況に陥る恐れもある。

 豊富な戦闘経験を持つと話す兵士には、78歳の母親と8歳になる娘がいるという。「自分には待っていてくれる家族がいる。(戦闘激化が)怖い」。携帯電話に保存された笑顔の娘を見つめる表情が曇った。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪駐日大使 「われわれはロシアと戦争中だ」≫

 ウクライナのイーホル・ハルチェンコ駐日大使が18日までに都内で共同通信と会見、ウクライナ東部では今月12日の新たな停戦合意の後も政府軍と、ロシアの支援を受ける親露派武装組織との交戦が続いており「われわれはロシアと戦争中だ」と述べた。大使はロシア軍がウクライナ領内で活動していることは「百パーセント確かだ」と強調、「今のロシアはテロ国家だ」とプーチン政権を非難した。

 東部の状況について大使は、15日の停戦発効後「おおむね戦闘は止まっているが、例外がある」とし、親露派がウクライナ軍部隊を包囲したと主張しているドネツク州の交通の要衝デバリツェボでは戦闘が続いており「状況は極めて不安定だ」と述べた。ほかにアゾフ海に面する港湾都市マリウポリでも戦闘が続いていると指摘した。

 12日にミンスクでまとまった新たな停戦合意については「戦場での交戦を止める合意ができただけ。和平合意はまだない」と説明。和平合意はロシア軍部隊がウクライナ領から完全、無条件に撤退した後に可能になるとし、外国部隊の撤退を定めた昨年9月の「ミンスク合意」を履行するようロシア側に強く求めた。

 東部の親露派に「特別な地位」を与えるとした12日の合意について大使は「地方自治」を認めるもので、広範な自治権の付与ではないと強調。「ウクライナは領土の一体性を守る」と述べた。(SANKEI EXPRESS

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