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経済
【OMOTENASHI SELECTION 2014】金賞(6)ソイソルト これまでにない醤油の価値探求
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江戸時代からある蔵で熟成されて独特の味わいがつくられ、醤油の新しい価値を生んでいく=2015年2月9日(石原敏彦さん撮影、提供写真)
■株式会社かめびし ソイソルト
江戸時代中期の宝暦3(1753)年に創業し、全国でただ一つ古くからの醤油(しょうゆ)づくりを守り続けている老舗が生み出したシーズニング(調味料)。丹精を込めてつくられた醤油を香ばしくフリーズドライにし、塩のように振りかける感覚が新鮮だ。カリッとした食感も心地よい。ミシュランの三つ星など内外シェフから高い評価を受けるなど、新しい食の喜びを提案する。
「父でもある16代目が家業を継いだ昭和40(1965)年頃、醤油づくりの機械化が急速に進むことになりました。コクやうまみの深さなど独特の味わいを守ることはできず、父は自分たちのものはすべて自分たちでつくると決意し、むしろ麹(こうじ)による創業以来の手法を続けています」
18代目の岡田佳織代表がこう話す、むしろ麹とは、丸大豆と小麦に種麹を加え、むしろの上で3日3晩かけて麹をつくる製法。1回につき約2.4トンの材料を14段ある棚の上で1枚ずつ手作業で敷き、麹室の小窓を開閉するなど昼夜を問わず2時間おきに温度管理を行う。麹の成長のばらつきを整えるため、2日目には材料をすべて棚から落とし、改めて敷き直すなど、手間を惜しまない仕事を冬の間ずっと繰り返す。塩水が加えられ、もろみとなり、2年以上熟成されて、こいくち醤油となる。大豆、小麦、にがりは吟味された国産だ。
敷地内にある18棟が国の登録有形文化財となっており、日々の営みそのものが伝統を継承し、新しい価値を生む。谷口雅昭工場長は「麹やもろみは江戸時代からある蔵に生きている230種もの菌類と協同して成長し、ここでしかできない味わいとなります。本物をつくることが、今に生きる価値につながります」という。
岡田代表は17代目の姉とともに米国留学経験を持つ。「姉も私も外から日本を眺め、そのすばらしさに気づきました。グローバル化が進む現在を見通していた父のおかげですが、父は本物をつくり続けることを大切にし、これまでにない醤油の価値を早くから探求し、私たちは外国の料理人、菓子職人の力も得て新しいものづくりを進めました」と振り返る。
醤油はフリーズドライ化が難しく、製造プログラム作成だけで1年以上を要したという。「実験用に機械を購入し、基礎データづくりも行いました。内製化を始めましたが、今回導入した本格的な装置を使って、新しい試みに乗り出そうとする方のお手伝いができればとも思います。ものづくりの伝統が息づく私たちの町づくりに参加しながら、価値のあるものを提供し続けたいと考えています」
所在地:香川県東かがわ市引田2174 www.kamebishi.com
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