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【勿忘草】尊い多様性

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【勿忘草】尊い多様性

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 舞台鑑賞、なかでもミュージカル鑑賞が大好きだ。時間を見つけては見に行っているが、2月初旬に見たミュージカル「メンフィス」は出色の出来だった。

 ご存じ、「メンフィス」は2009年に米ブロードウェーで初演され、多くの賞を受賞。黒人差別の色濃く残る1950年代の米国を舞台に黒人の歌姫、フェリシアと白人青年、ヒューイの恋を描いたミュージカルだ。

 日本初演となった今回は、フェリシア役に濱田めぐみ、ヒューイ役に山本耕史を配し、存分に“聴かせる”作品に仕上がった。ロック調、ソウル風、ゴスペル…とさまざまな歌が出てくるが、作品の最大のテーマは「差別とどう向き合うか」だろう。

 公演を見に行ったころは、ちょうど「イスラム国」による日本人殺害のニュースが扱われている時期だった。それだけに、異なる文化や歴史を持つ人たちとどう付き合っていくかという意味で示唆に富んだ舞台だった。

 ネタバレになるので詳細は控えるが、白人と黒人の結婚が許されない時代に、愛し合う2人はさまざまな困難に立ち向かっていく。もちろん挫折もある。それでも、黒人が激しく差別されていた時代に、フェリシアの歌声は世の中に徐々に受け入れられていく。音楽のもつ力は、人々の意識をも変えていくのだ。

 一方の「イスラム国」はといえば、彼らの蛮行に対する政府の対応をめぐり、国内ではさまざまな意見が出た。国が団結してテロとの戦いを進めていこうとするときに、政府の対応を非難すべきではないという声もあがった。しかし、敵対するすべての言論を認めない「イスラム国」に比べ、多様な言論が許される日本はなんとすばらしいことか。

 ヒューイとフェリシア、2人の恋はどうなるのか。ミュージカルの結末は少し悲しい。そして、とてもリアルだ。この世界には、個人と個人の関係だけでは越えられない壁がある。そして、壁を越えようとする方法は1つではない。

 ブロードウェーで上演された際は、結末をめぐり賛否あったという。それこそが、この作品のすばらしさである気がする。多様なものが存在できる尊さをかみしめながら、帰路に就いた。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS

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