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【まぜこぜエクスプレス】Vol.39 「障がい」って何だろう? 認め合える社会を目指して

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.39 「障がい」って何だろう? 認め合える社会を目指して

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まぜこぜエクスプレスに登場してくれた、(上段左から)メッセージソング「Get_in_touch!」のPV、元パラリンピック競泳選手の成田真由美さん、ラッパーのGOMESS君、(下段左から)日本理化学工業のみなさん、レストラン「アンシェーヌ藍」のみなさん、ダンスチーム「ソーシャルワーカーズ」(提供写真)  ふだんなかなか目にすることができないマイノリティーに関する情報を届けてきた「まぜこぜエクスプレス」。これまでの取材を通じて感じたことを振り返り、新しい年に何をすべきなのか考える2回目は、「障がい」について。

 ハンディを可能性に

 Get in touchで活動し、まぜこぜエクスプレスの取材をしていると、「障がいのある人はかわいそう」というイメージは、いい意味でどんどん裏切られていく。自身のハンディキャップを受け入れながら、特性を生かし人生の可能性を広げている人たちに出会えるからだ。

 元パラリンピック競泳選手の成田真由美さんは、幾度も大病を患いながら不可能と思われるチャレンジを続けてきた。車椅子の生活だが、「健常も障がいも関係なく、いろんな人が一緒に何かをすることが普通になってほしい。そうなるきっかけをどんどん作りたい」と意欲的だ(2014年11月5日掲載)。

 「自閉症ラッパー」という肩書をもつGOMESS君は、一般的には「コミュニケーションが苦手」とされる障がいをもっているが、ラップで自分を表現し、音楽によって深く人とつながってきた。「音楽をつくるのが楽しい。人から求められるってすごくうれしい」という彼の音楽は、多くの人を勇気づけ、その人気も急上昇している(2014年9月10日掲載)。

 福祉が、社会が変わる

 障がい者をサポートしている人たちも、なぜか個性的な人が多い。そして、信念によって壁を突破するエネルギーを持っている。

 従業員の7割以上が知的障がい者という日本理化学工業の大山泰弘会長の信念は「皆働社会」。「人間の幸せは人の役に立つこと。このシンプルな真理に気づくことができたのは、障がいのある人のおかげ」と話してくれた(2014年7月23日掲載)。

 東京都世田谷区にあるレストラン「アンシェーヌ藍」の竹ノ内睦子さんは「障がいがあるからって何かをあきらめなきゃならないのはおかしい。障がいをもつ人の夢は絶対にかなえたい」と断言。アンシェーヌ藍は、「レストランで働きたい」という一人の障がい者の夢をかなえるためにつくられた(2014年8月13日掲載)。

 誰もが対等で、自由に生きることができる社会。そのためには社会の価値観を変えていく取り組みも必要だ。福祉とダンスをつなぐダンスチーム「ソーシャルワーカーズ」の桑原一郎さんと笹本智哉さんは、「支援という形を崩したい」と言った。「ダンスというツールがあれば、支援する側、される側の垣根がなくなり楽しい時間を共有できる」とイベントを企画する(2014年8月20日掲載)。

 色とりどりの人たちと

 昨年末に開催したメッセージソング「Get in touch!」のプロモーションビデオお披露目会には、協賛企業や制作の関係者、出演者ら約150人が集った。出演者のほとんどは何かしらのマイノリティー。障がい者と呼ばれる「特性」のある人も複数いた。義足、車いす、ダウン症、脳性麻痺(まひ)、性同一性障がい、知的障がい、精神障がい…。

 参加したある企業のトップが受け付けをしながら、不安を隠せない様子で私に言った。「普段見たことない人たちがたくさんいるんですね…」。もちろん彼に悪気などない。「ダイジョウブですよ。まぜこぜを楽しんでくださいね。みんな同じです」。「えっ?」。「みんな人間ですよ」。彼は「そんなことわかってます」という感じで苦笑い。明らかに戸惑っていた。

 ところが、2時間以上の交流会がお開きになっても、彼はなかなか帰ろうとしなかった。「なんて居心地がいいんでしょう! 僕は知らなかった」。さまざまな人たちと触れ合い、話し合った彼は、感動しきった様子の笑顔だった。

 ダイバーシティー、多様性社会、ノーマライゼーション、インクルーシブ…。言葉は知っていても体感しなければその心地よさは伝わらないのだろう。もちろん煩わしさだってある。だが、それこそ経験しなければ、配慮の仕方やその解決方法もわからないままだ。

 障がい者は「弱い」とされがちだ。確かに、今の社会では弱い立場にならざるを得ない時がある。しかし、時には障がいをもたない人より「強い」と思うこともある。他者が作った価値観に惑わされなかったり、理不尽なことをしなやかに受け止めたり、実は人を深く見ていたりと。一緒にいると彼らの優しい気持ちに感染することもある。だから、取材の時間をいつもオーバーしてしまう。そしてまたすぐに会いたくなる。

 それぞれの特性を「障がい」と呼ばなくていい時代に一日も早くなるように、今年も色とりどりの(多様な)人と一緒に発信していきたい。(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/SANKEI EXPRESS

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