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経済
【OMOTENASHI SELECTION 2014】金賞(9)ougi 京の美意識受け継ぐトート
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京都で培われた優れた感性と伝統の染織技術を生かし、自然と向き合いながら、現代の生活に寄り添うものづくりを進める=2015年1月23日(石原敏彦さん撮影、提供写真)
■光章/ougi
風のそよぎに含まれた細かな表情にも四季の移ろいを読み取る日本人の感性を麻と綿を同量で使い、品格と存在感のある帆布でできた斬新なスタイルのトートバッグに映す。裾を開けば名前の通り扇の形が現れ、着物の襟元や袖口、裾からのぞく差し色に粋を見いだす伝統的な美意識が浮かび上がる。
京友禅で培った色彩に対する染め職人の鋭敏な感覚と洗練を極めた技は、豊かな自然、精巧な建造物や日常の光景からもたらされた心の動きを鮮やかな色の見立てに昇華させる。
「紅は嵯峨野の竹林に咲いた侘助(わびすけ)を表しています。ツバキの中でも独特の趣があり、実際には茶色がかっていたかもしれませんが、花の周りにあった緑色との対比から目に留まったときの印象や心の動きを紅の色に託しています」
そう語る小川光章代表は、ピンクの色は二条城のツツジを示し、青は京都の町家の軒先にあったアサガオの縹色(はなだいろ)であるという。墨色は銀閣寺にある水墨画の世界、帆布の生成りの色は桂離宮書院の白壁を目にした際の記憶が刻まれている。
「私たち職人は自然に学び、写し取り、自然とともにある情景からインスピレーションを得て日々の創作を進めています」と言葉を続ける。
江戸中期に活躍した画家の伊藤若冲(じゃくちゅう)は、小川代表が生まれ育ち、アトリエを置く京都の伏見に晩年の身を寄せた。墨のにじみを組み合わせて輪郭を描く超人的な技巧の水墨画を完成させ、現代アートと見まごうデフォルメに孤高の境地を示したが、自然とどこまでも向き合って、対象の内側に切り込み、核心に迫る姿勢で通底している。
小川代表は着物からインテリアへとジャンルを広げ、絹から麻や綿と素材の可能性を探りながら、伝統の技術と感性を生かし、日常の暮らしに寄り添うものづくりを進めてきた。2012年には京都商工会議所の創造的文化産業(クリエイティブ産業)モデル企業に個人のアトリエとしてただ一つ選定され、パリの見本市「メゾン・エ・オブジェ」などで高い評価を受けた。ougiはニューヨーク近代美術館のショップでも販売され、言葉を超えて理解されることに驚き、喜びを覚えたと振り返る。
「自然と響き合い、五感で感じ、非言語で伝わるものを求めています。何かをつくろうとデザインを起こし、寸法を決めるのではなく、私たち職人は手の感覚を出発点にしています。考え、ひねり出すのではなく、手から自然に出てきたものが形になり、意匠となります。記憶の中にある風景、そこに流れていた風や色も表現して、暮らしの中に生きるものづくりをさらに進めたいと思います」(ニュースペース・コム編集部/SANKEI EXPRESS)
■光章 <所在地>京都市伏見区深草東瓦町13-3 www.kyoto-kosho.com