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経済
地価公示 三大都市圏、2年連続上昇 地方でも分かれる明暗 進む二極化
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東日本大震災からの復興に伴う土地需要で、公示地価の上昇率が高い福島県いわき市。手前は上昇率が全国1位になった泉もえぎ台=2015年3月13日(共同通信社ヘリから撮影) 国土交通省は18日、今年1月1日時点の公示地価を発表した。東京、大阪、名古屋の三大都市圏の平均で、住宅地が前年比0.4%上昇(前年は0.5%上昇)、商業地が1.8%上昇(前年は1.6%上昇)となり、ともに2年連続で上昇した。一方、地方圏の平均では住宅地、商業地ともに下落が続いたが、下げ幅は縮小。都市部を中心とした地価の回復傾向が続いていることが鮮明になった。
全国平均では、商業地が前年の0.5%下落から横ばいに転換し、下げ止まった。住宅地も、前年の0.6%下落から0.4%下落に下げ幅が縮小した。ともに5年連続で改善した。都市部を中心とした地価の回復傾向は、国内の景気が緩やかに回復する中、低金利で資金が調達しやすくなるなどした結果、企業や個人によるオフィスビルやマンションなどの需要が堅調に推移しているためだ。
地方圏の平均では、住宅地が1.1%下落、商業地が1.4%下落で、ともに23年連続のマイナスだったが、下げ幅は縮小。札幌、仙台、広島、福岡の4市からなる「地方中枢都市」は住宅地、商業地ともに上昇した。ただ、地方圏の中での格差も浮き彫りになっており、秋田県は人口減や高齢化、地域経済の低迷を背景に、都道府県別では前年に続き住宅地、商業地ともに下落率が最大だった。
東日本大震災の被災地では復興に伴う土地需要が旺盛で、都道府県別の住宅地の上昇率で福島県が2.9%と首位になり、宮城県が2.3%で後に続いた。また、住宅地の上昇率の全国上位10地点すべてを福島県いわき市が占めた。
地価の最高地点は、東京都中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」。前年比14.2%上昇の1平方メートル当たり3380万円で、全国首位は9年連続となる。
≪地方でも分かれる明暗 進む二極化≫
18日発表された2015年の公示地価は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏が住宅地、商業地とも2年連続で上昇し、都市部を中心に地価の力強い回復が裏付けられた。一方、地方では7割の地点で下落が続き、都市と地方の二極化が一段と進んだ形だ。都市部で都心と郊外で格差が拡大しただけでなく、地方でも同一地域内で明暗が分かれたケースもあり、地価の動向は「多極化」の様相を呈してきた。
「将来の資産形成にもなる」
40代の会社員男性がこう購入理由を語るのは、三菱地所レジデンスなどが東京・西新宿に建設中のタワーマンション。国内初の60階建てマンションとして注目を集め、2月の第1期申し込みでは最高価格の3億5000万円の住居を含め325戸が即日完売した。
勝どきや豊洲など湾岸エリアの人気も根強く、高級マンションの販売は過熱気味。この流れは地価に反映され23区全体で住宅地は1.9%上昇。都心3区は中央区6.4%▽千代田区6.3%▽港区6.0%-と上昇が続く。
だが、マンション取引は「都心部で活発な半面、郊外部では鈍い」(不動産経済研究所)という。富裕層が都心の「億ション」を買いあさるのとは対照的に、郊外型マンションの購入層にはアベノミクスの恩恵が行き渡っていないからだ。
建築費の上昇で利益が圧迫されるマンションの売り主は地代を安く抑えようとするため、「千葉や埼玉では地主との価格交渉が決裂するケースが増えている」(不動産大手)。住宅地では埼玉県川越市が下落に転じ、千葉県でも市川市や船橋市の上昇幅も前年より大幅に縮小した。
都市と地方の二極化は商業地でも顕著だ。東京都の商業地の上昇率は2.9%と2年連続で全国トップとなった。これを支えるのが堅調なオフィス需要だ。オフィス仲介の三鬼商事によると、2月末時点の都心5区のオフィスの平均空室率は20カ月連続で改善。既存ビルに限れば2月の空室率は4.78%と6年ぶりの4%台に低下し、需給は逼迫(ひっぱく)しつつある。
一方、秋田県の下落率は住宅地(4.2%)、商業地(5.0%)とも2年連続で全国ワースト。工業地も秋田市の秋田港付近が全国最大の下落率8.2%を記録した。秋田の人口減少率は全国最悪で少子高齢化の進行も最速だ。秋田市の不動産鑑定士は「JR秋田駅周辺にも未利用地が多く、商業地の取引は停滞したまま。工場の進出も他県と比べて劣勢だ」と地価下落の背景をこう分析する。
同一地域内でも格差は生じている。広島県ではJR広島駅周辺の再開発で商業施設の進出が進み、駅周辺の商業地3地点で10%以上の上昇を記録した。一方、江田島市の住宅地は全国の下落率ワースト10に3地点が入り、市街地と過疎地・島嶼(とうしょ)部との差は歴然だ。
千葉県内のあるベッドタウン。駅から徒歩数分の大規模マンションは好調だが、「徒歩10分以上の場所は事業の見通しすら立たない」(大手デベロッパーの担当者)という。
「郊外では賃貸物件で徒歩10分弱、戸建て住宅で15分という『境界線』があり、これが物件の売れ行きを大きく左右している」
都市未来総合研究所の平山重雄常務執行役員はこのように「多極化」のカラクリを説明する。
人口減少や少子高齢化、不便な交通網…。地方の地価上昇を阻むものこそが、地方から活力を奪う“病巣”だ。公示地価が示した都市と地方と埋まらぬ格差は、安倍晋三政権が掲げる「地方創生」の難しさを浮き彫りにしている。(SANKEI EXPRESS)