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挫折乗り越え 感謝の気持ち音に SUPER BEAVER
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4人組バンド、スーパービーバー=2015年1月19日(提供写真) ニューアルバム『愛する』のリリース日、1日に結成10周年を迎える4人組バンド、SUPER BEAVERに初めて会った2008年当時、彼らは20歳くらいだったと記憶している。10代の頃、コンテストで優秀な成績を収め、メジャーデビューし、その後自主レーベルを経て現在はインディーズで活動している。今作の制作前にはメンバーの入院にも見舞われた。さまざまな経験をしてきた彼らのキャリアと最新作について、メンバー全員に話を聞いた。
10年間で直面したターニングポイントについて、ベースの上杉研太は「メジャーを辞めて解散しなかったこと。ここで終わってたまるかと思いました。それを20代前半で経験できたのは大きかった」と振り返る。そこから自分たちで全ての作業をこなす自主レーベルを設立。CD制作やツアーだけでなく、プロモーション用の紙資料もメンバーが自作していた。その後、「仕事ではなく、仲間として愛をもって接してくれる」とドラムの藤原広明が語る今の事務所兼レーベルと契約し、音楽活動に集中できる環境を手に入れた。
彼らの鳴らす音楽が変わってきたように私が感じたのは、この自主レーベルから現レーベルと契約するまでの時期だったと感じている。挫折を経験しても大切なものを守って前に進むこと、人のつながりや感謝の気持ちをストレートに、なじみやすいメロディーと勢いのあるバンドサウンドに昇華した楽曲は、聴く人やライブを見た人をひきつけていった。今ライブは活況で、動員はメジャーレーベル在籍時期と並ぶかそれ以上だ。
「本当のことだけを言いたくて、それを気持ちよくやっていたら、手を差し伸べてくれる人が増えてきました」とボーカルの渋谷龍太は言う。「自分にも人にも誠実であれ、という一点でやってきました」とギターでソングライターの柳沢亮太が言うように、音楽以前に人として真っすぐに生きることがこのバンドの魅力となって人をひきつけていると感じている。
そんな彼が病気で入院し、バンド活動からの離脱を余儀なくされた時期があった。「『証明』という曲のデモが退院したばかりの柳沢から届いて、移動の車中でみんな聴きながら泣いていたのをすごく覚えています」と藤原は話す。
柳沢が復帰してバンドがさらにタフになった感覚はサウンドやコーラスとして聞こえてくる。過去の経験を音楽に昇華できている今、彼らの音楽は強く心を打つ。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS )