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韓国紙、中国主導のAIIB参加を評価
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中国主導の国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)には、韓国をはじめ約50カ国・地域が参加することになった。米国が韓国に参加しないよう圧力をかける中で、韓国は同盟国である米国との関係よりも経済的利益を優先した形だ。AIIB参加については、多くの韓国紙(電子版)が歓迎の立場を示している。
ソウル新聞の社説(3月28日)は「遅れた感はあるが、韓国がAIIBに参加を決めたのは避けられない選択として評価できる」と肯定的に捉え、「中国の過度の経済覇権を牽制(けんせい)するためにも、ヨーロッパの国々と一緒に一翼を担いバランスを取っていく必要がある」と注文を付けた。
中央日報の社説(3月27日)は、「遅くなったが、政府が参加を決めたのは評価に値する」としながらも、「われわれがもう少し早く参加の意思を明らかにしていれば、AIIBの出資比率や高位職の配分などで有利な位置を占めることができたという点は残念だ」とした。
朝鮮日報の社説(3月28日)は「中国を警戒する米国と、最大の貿易相手国である中国との板挟みとなってきた」とした上で、「韓国としては米国の意向を無視できない事情があるのも確かだが、今回の参加決定とその表明が時期的に適切だったのかは疑問として残る」とも指摘した。
その上で「ただし、AIIBが発足すれば、韓国企業がアジアの土木建設市場に参入するチャンスはこれまで以上に増えるだろう。しかしそれよりも重要なことは、中国人民元の影響力が拡大するのに従い、それが韓国経済に及ぼす影響も大きく変わってくるという事実だ」と楽観的な展望を示した。
毎日経済の社説(3月28日)は、「重要なのは資本金500億ドル(約6兆円)でスタートし、いずれ1000億ドルと大きくなる、この銀行に対し韓国が持ち分をどのくらい確保できるかだ」「20~30%の持ち分で最大の出資国となる中国の好き勝手にできないようにするために牽制と均衡の妙を生かす支配構造を作らなければならない」と主張した。
東亜日報の社説(3月28日)は「AIIB参加、統一費用の負担軽減の機会に活用せよ」とのタイトルで、「韓国も創立メンバー国となり、最終列車に乗った。アジア地域のインフラプロジェクトで有利な地位を確保し、北朝鮮のインフラ開発など南北経済協力の窓口を広げる機会だ。今後の交渉で、最大限の持ち分率の確保と役割の増大に総力をあげなければならない」と訴えた。
さらに統一コストに関連して「北朝鮮に必要な11の核心インフラプロジェクトを始めるには、10年間で約100兆ウォン(約10兆円)の投資が必要だ」「AIIBを通じて民生インフラの開発構築に参加すれば、統一コストの負担を減らすこともできる」と試算した。
また、東亜日報の社説は、韓国で現在、その配備の是非が議論されている米国の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)に関連して、「米国の圧迫にもかかわらず、経済的実益からAIIB参加を決めたように、THAADシステムの配備問題も国家主権の次元で決断しなければならない。AIIBへの参加が米国が大騒ぎする事案でないように、THAADも中国が介入する問題ではない」と、THAADの韓国配備に反対する中国を暗に批判した。
ハンギョレの社説は、「政府の参加決定は一歩遅れた感もあるが、肯定的な評価を受けるに値する」と論じ、遅れた理由として「この機構が米国と日本が主導する既存の国際金融覇権に対抗する中国主導の新たな秩序構築の性格を強く帯びているためだ。とくに在韓米軍のTHAAD導入計画と絡み、米国と中国の力比べの様相を呈している点も、韓国政府がにわかに参加を決められなかった要因であろう」と分析。その上で、「中途半端な姿勢で遅れて参加決定して生じた不利を挽回するためにも、韓国政府の奮起がより一層求められる」と論評した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)