ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
アメリカ飛び出した「新しいブルース」 ソンゴイ・ブルース、ウジ・ラミレス
更新
4人組バンド、ソンゴイ・ブルース(提供写真)。(C)Andy_Morgan ブルースといえば、米国南部を代表する音楽だ。ブラックミュージックが好きだったら、渋い声を持つボーカリストや老練のギタリストが何人か頭に思い浮かぶことだろう。20世紀初頭に生まれたブルースは、その後のロックやソウルに大きな影響を与えた。一時期は忘れ去られた古くさい音楽というイメージだったが、21世紀に入ってからは急速に広がりを見せ、世界各地で新しいブルースが誕生している。ここでは、米国から遠く離れた地で生まれ変わったブルースを紹介しよう。
西アフリカのマリは、世界でも有数の音楽大国のひとつ。ティナリウェンというグループを筆頭に「砂漠のブルース」なんて呼ばれる独特の音楽が存在することで知られている。現在もっとも注目されているのが、ソンゴイ・ブルースという4人組バンド。ソンゴイ族という少数民族のミュージシャンが集まり、3年前の政情不安の時期に結成され、バーや結婚式などのイベントで稼いでいたそうだ。
しかし、英ロックバンド、ブラーのデーモン・アルバーンのプロジェクトであるアフリカ・エクスプレスのプロデューサーの耳にとまり、それをきっかけにアルバム「ミュージック・イン・エグザイル」でワールドデビューを果たした。アフリカの伝統音楽に基づいたメロディーやハーモニーなどをふんだんに取り入れ、ありきたりのロックンロールをけちらすタイトで太いビートで包み込んだサウンドが圧巻だ。
中東のイスラエルにもブルースが存在するというと、ちょっと驚くかもしれない。ウジ・ラミレスは、ブーム・パムというサーフロック・バンドにも在籍していた個性的なミュージシャン。長髪にあごヒゲ、大きなサングラスという風貌だけでもインパクトはあるが、その音楽もなかなかユニーク。1970年代のサイケデリック・ムーブメントそのまんまといったイメージで、ブルース・ロックを基調にアコースティックなフォーク風からオーケストラ・サウンドを取り入れた壮大な世界まで振り幅もかなり大きい。味のあるダミ声ボーカルも含めレイドバックした印象だが、どこかエキゾチックな雰囲気も持ち合わせている。時代も国籍も超越した味わいが楽しめる唯一無二の個性派だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)