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米、キューバ「テロ支援国」解除通告へ 国交正常化交渉促進の「手土産」 共和は徹底抗戦
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虹がかかるなか、訪問先のジャマイカからパナマへ移動するため、大統領専用機「エアフォース・ワン」に乗り込むバラク・オバマ大統領=2015年4月9日(AP) オバマ米大統領は9日、訪問先のジャマイカで記者会見し、キューバに対するテロ支援国家指定の国務省による見直し作業が完了し、勧告がホワイトハウスに送付されたことを明らかにした。オバマ氏は勧告の内容を明らかにしていないが、ロイター通信などは米上院外交委員会の有力議員の話として、指定解除が勧告されたと伝えた。オバマ氏は近く解除を最終決断し、米議会に通告する見通しだ。議会の承認は必要なく、通告してから45日後に解除される。一方、ケリー国務長官とキューバのロドリゲス外相は9日、パナマで会談した。両国の外相会談は1961年の断交後初めて。
オバマ氏とキューバのカストロ国家評議会議長は9日夜までに、米州首脳会議が10日から開かれるパナマ市に入った。オバマ氏が会議の場でカストロ氏と接触し、解除の方針を直接伝える可能性がある。解除されれば、両国は国交正常化に向けて大きく動き出す。
オバマ氏は記者会見で「(指定解除で)米・キューバ関係が改善されるだけでなく、キューバ国民にも利益となる」と強調した。オバマ氏によると、指定解除は、最終的に省庁横断的な詰めの作業をした上で正式な勧告が大統領に提示される。近くオバマ氏自身が解除を決定して議会に通告する見込みだ。他に指定されているのはイラン、スーダン、シリアの3カ国。
一方、キューバ革命前の58年以来となるケリー氏とロドリゲス氏による外相会談について、米国務省高官は10日、「非常に建設的な議論だった。進展があったとの認識で一致した」と評価した。テロ支援国家指定の解除方針がこの場で伝えられた可能性もあり、首脳会談という歴史的な和解の実現に向け、大きな弾みが付いたとみられる。この高官によると、両国間の未解決の課題について協議を続けることで双方が合意。ロイターによると、会談は2時間以上にわたった。(パナマ市 黒沢潤、 ワシントン 青木伸行/ SANKEI EXPRESS)
≪国交正常化交渉促進の「手土産」 共和は徹底抗戦≫
オバマ米大統領が米州首脳会議が10日からパナマ市で開かれるのに合わせてキューバのテロ支援国家指定解除に動いたのは、国交正常化交渉を促進するための“手土産”として、駆け込み的に決断した公算が大きい。米議会で多数派の共和党は反発しており、オバマ氏がイランの核問題と同様に、苦しい議会対策を強いられることは確実だ。
国交正常化交渉について米国、キューバ両政府は当初、今回の会議までに双方の大使館再開で合意することなどを目指してきた。しかし、最近は「首脳会議までに、相互の大使館再開で合意できると予想してはいない」(ローズ米大統領副補佐官)などと説明していた。詳細は不明だが、米国による経済制裁の全面解除や、キューバの人権問題などをめぐり協議が難航しているとみられる。
こうした中、米州首脳会議に間に合わせる形で指定解除に動いたのは、国交正常化に前のめりともいえるオバマ政権が、交渉を大きく前進させることを狙ったからにほかならない。
テロ支援国家指定に伴い、米政府はキューバに対し、軍需関連物資の輸出や金融・財政支援などを禁じる制裁を科してきた。テロ支援国家指定と関連の制裁の解除は、議会の承認を必要としない。
ただ、大統領は指定解除期日の45日前に下院議長などに解除の決定を通告しなければならない。つまり、議会への通告から45日間は指定は有効で、この間に議会共和党が指定解除を阻止するため、新たな立法措置などの法的手段を講じることは確実とみられる。
一方で、テロ支援国家指定に伴う制裁とは別に、ヘルムズ・バートン法(キューバ自由・民主的連帯法)などに基づく経済制裁措置は続いている。
キューバは国交正常化のための要件として、テロ支援国家指定解除に加え、経済制裁の全面解除の2つを主張している。ヘルムズ・バートン法などに基づく経済制裁の解除には議会の承認が必要で、共和党は制裁の維持に向けて徹底的に抵抗する構えだ。(ワシントン 青木伸行/ SANKEI EXPRESS)