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32歳のいま鳴らすべき音 Keishi Tanaka

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32歳のいま鳴らすべき音 Keishi Tanaka

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シンガー・ソングライター、Keishi_Tanakaさん(提供写真)  Keishi Tanakaが、2枚目のアルバム「Alley」を完成させ、4月22日にリリースする。流麗なストリングスが随所に織り込まれ、ホーンが高揚感をあおる軽快でポップな作品は、暖かくなってきたこの季節にぴったりの雰囲気だ。サウンドの華やかさは参加人数からもうかがえて、アルバム全体で19人に及ぶアーティストが参加している。

 本人は「制作開始時期に聴いていたハーマースーパースターなどの新譜が、自分の好きなブルーアイドソウルのフィーリングに近くて刺激を受けました」と振り返る。最近よく耳にするライトタッチなソウルアレンジの楽曲は、彼が以前組んでいたバンド、riddim saunterが得意としていたサウンドの一つでもある。しかし今作で懐古的なものを目指したわけではなく、「10歳以上年下のバンドにも興味がありますし、諸先輩方の音楽も聴いていますが、32歳という年齢でいま自分が鳴らすべき音、というテーマも今作にはあります」という。キャリアやノウハウ、原点にある音楽性をアイデンティティーとしながら、旬なサウンドとリンクできているのは、一線で音を鳴らし続け、アーティスト性とポピュラリティーという二律背反的な要素をまとめ上げられる彼の才能だと感じる。

 音楽だけに限定せず

 非凡な表現力はシングルの販売スタイルにもうかがえる。「秘密の森」という楽曲は、CD付き絵本として売られた。20センチ以上のサイズ、ハードカバーで一般的な絵本のサイズといってもいい大きさで、物語のように歌詞が書かれている。そして昨年末にはハンカチ付きのシングルがリリースになっている。「シングルは、その一曲で明確に世界観を表現できて、例えば、泣いている少女がモチーフだからハンカチをつけよう、とか、音楽だけに表現を限定せずに届けられると思うんです」と彼は話す。

 「所属レーベルにアートやファッションといったカルチャーの求心力のある人たちが集まっているためでもありますが、そもそも音楽の周りにあるものを表現することが自然なんです。音楽を外に向けて発信するなら、アートワーク、ビデオ、さらにそこに登場する人の服まで、いろいろイメージを広げることになります」

 こう話したあとに、「でも絵本の作成は大変でした」と笑った。思い描いたものを妥協しないで形にする姿勢は、2年という時間をかけて繊細で気持ちよく響くサウンドに昇華された。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS

 ■ケイシ・タナカ 2011年、ボーカルを務めていたriddim saunter解散後、シンガー・ソングライターとしての活動を始める。13年に1stアルバム「Fill」をリリースし、13年12月にはCD付き絵本「秘密の森」を発売。表現形態を限定せず、ソングブック制作、弾き語りからバンドセット、ライブハウスから幼稚園までさまざま形態と場所でライブを行う。2ndアルバム「Alley」は4月22日発売。

 ■ふじた・たくみ 1976年、東京都生まれ。ラジオ、テレビの音楽番組を中心に活動する傍ら、年間150本ほどライブに通う。現場主義の視点で音楽を紹介し続けている。

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