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伝統+モダン 和の調べ「化学反応」 二十絃箏奏者 黒澤有美さんに聞く

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伝統+モダン 和の調べ「化学反応」 二十絃箏奏者 黒澤有美さんに聞く

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二十絃箏奏者、黒澤有美(ゆみ)さん=2014年8月16日(提供写真)  「琴」と呼ばれる楽器のほとんどは、実際は「箏」である。その現代版ともいえる「二十絃箏」の魅力を、米ニューヨークから世界に発信している黒澤有美(39)。古典から自作曲、さまざまなジャンルとの競演まで、その調べには「泣きたくなる」という声が多いのだという。伝統的な邦楽だけにこだわらず、あらゆる文化を吸収し、咀嚼(そしゃく)してきた経験が、郷愁を誘う音楽を作り出している。21日には東京・代官山で尺八奏者の藤原道山とのライブがある。

 音楽と勉強を両立

 岩手県盛岡市で和楽器店を経営する箏奏者の両親のもとに生まれ、小学生のころから数々のコンクールで優勝。才能は折り紙付きで、箏奏者の道を進むことは自然の成り行きだった。

 だが自分なりの音楽を作りたい、という思いが一般的な邦楽奏者とは違う道を歩ませる。

 15歳のころ、母が弾いていた「二十絃箏」に出会った。

 二十絃箏は一般的な箏である、弦が13本の「十三絃箏」に低音域の8弦を足し、1969年に開発された新しい箏。「音域が広くて音の幅が深い分、いろいろな音楽とコラボレーションできる可能性がある点に引かれた」。盛岡から遠路、東京の師匠のもとまで教えを請いに通うようになる。

 音楽大学への進学を勧める周囲の反対を押し切り、慶応大学に進学して国際関係論を学んだ。「芸術は政府が支援する面もある。文化はあらゆることとつながっていて、音楽以外のことも知りたくなった」と笑う。

 並行してコンピューター音楽の研究室に所属。インターネットが本格的に普及する前で、まだ走りだったプログラミングによる音の打ち込みを研究、演奏家としての活動に大いに役立つこととなる。「音楽と勉強を絶対に両立させる」と、在学中にも数々のコンクールで入賞を果たし、卒業後は東京を拠点に本格的な演奏活動に入る。

 カーネギーで演奏会

 2002年に渡米。邦楽だけでなく、より広い世界を見たいという思いが、人種と文化のるつぼであるニューヨークへ向かわせる。いろんなものと「混ざりたかった」という思いが強かったからだ。

 知人もいない、金もないニューヨークで右往左往しながら少しずつ演奏の場を広げ、支援してくれる人もあって名門カーネギー・ホールでのリサイタルが実現する。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストで演奏の様子が紹介され北米はじめ南米、アジア、欧州などでの公演も行った。ピアノやバイオリンなどとの競演もこなした。

 2009年には自主編集のアルバムを制作。先ごろ第2弾となる「晴(はる)」を発表した。伝統的な箏の調べに、コンピューターサウンドも加わり、奥行きが深く、モダンで心地よい音楽の世界が広がっている。

 他ジャンルとコラボ

 昨年は米国で、シカゴを拠点とするパフォーマンスグループが、芥川龍之介の羅生門をベースに制作した舞台の音楽を手がけた。現在はヒューストンのバレエ団が6月に公演予定の、民話「鶴の恩返し」をベースにした新作バレエの音楽を制作中。さまざまな芸術とのコラボレーションで起きる化学反応が面白い。「チームで一つのものを作り上げていく作業に魅力を感じます。今後も積極的にやっていきたい」と意気込んでいる。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■黒澤有美ライブ 4月21日、東京・代官山 晴れたら空に豆まいて *ゲスト=藤原道山(尺八) (電)03・5456・8880。アルバム「晴(はる)」(2000円、税込み)。<問い合わせ>ポッションエッズ (電)03・5436・6992

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