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【相川梨絵のバヌアツ通信】変わらぬ笑顔に「タフトゥマス」
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支援物資の飲み水を手にするバヌアツの子供たち=2015年3月31日、バヌアツ(相川梨絵さん撮影) 皆さんも、ご存じのとおり、3月13日バヌアツは超巨大サイクロンPAMによって、全土に非常事態宣言が出るほどの大きな被害を受けました。休暇中の私はたまたま日本にいて難を逃れましたが、私の知人、友人も類にもれず、ほとんどのバヌアツ人が、家や家財道具などすべてを一瞬にして失いました。そして、サイクロン被害から2週間後、私たち夫婦は、とりあえず娘を日本においてバヌアツへ戻りました。
首都ポートビラの街は想像以上にきれいに片付いていました。しかし、少し車を走らせると、そこらじゅうで大木が根ごと倒されていて、村は壊滅的な状態でした。緑の大地は茶色に変わり、花や鳥を見なくなりました。ペットのイグアナは、餌のハイビスカスがなくなってしまったので、私たちは自然に帰すことにしました。なんとか生き延びてほしいです。
すでに建物を直し始めている家もあります。しかし、ほとんどの家では、資材を買うお金もなく、配給されたビニールシートを屋根代わりにして、しのいでいました。また、私が愕然(がくぜん)としたのは、現地の人々はみな、米しか食べていないということでした。
バヌアツは自給自足で生活している人がほとんど。畑がサイクロンで壊されてしまい、マーケットも再開されていない今、人々は今ある食料で食べつなぐほかありません。支援物資として届くのはほとんどがお米。どこに行っても、「今日も、明日もお米しかない。おかずが食べたい」という声でした。私も、水や米や缶詰をトラックに詰めて、物資が届いていない村へ運びました。
被害がひどかったと聞いている、島の北東部の人たちは大丈夫だろうか? 現状を見るのが怖い-という気持ちがありました。ところが、待っていたのは、サイクロン前と変わらない、フレンドリーで明るい笑顔。そこには、悲痛や苦しみに満ちた顔はありません。彼らは、余裕の笑顔で私たちを迎えてくれました。バヌアツ人ってすごい!
日中は、30度にもなるこの時期だけに、配っている私たちも喉がカラカラです。それ以上に喉が渇いて、おなかが空いているであろう彼らは、物資に殺到するわけでもなく、平等に分け合っているのです。バヌアツの復興のテーマが「キープ スマイル」。海外から支援活動のためにやってきた誰もが、バヌアツ人の笑顔に驚いています。
バヌアツの言葉で強くたくましいことを褒めるときに「タフトゥマス」というのですが、まさに彼らはTAFU TUMAS! バヌアツ人のタフさ、強さに称賛の気持ちでいっぱいです。
被災から1カ月。ここからが正念場です。被災当初は緊急支援など世界中からたくさんの支援が届きますが、今後、徐々に少なくなります。しかし、人々がマーケットで食料を手にできるようになるまで半年かかると言われ、いまだきれいな飲み水を必要としている人が11万人います。皆さんには、長い目で支援をお願いしたいです。
また、忘れてはならないのが、バヌアツは観光立国でもあること。国家収入の4割が観光で成り立っています。今回被害が大きかったのはバヌアツ南部の島。幸いにも観光地として人気のサント島、ペンテコスト島などは、サイクロン前と変わらない景色で、野菜や果物もたくさんあります。しかし、それを知らずか観光客のキャンセルが相次いでいるそうです。観光地としての復活なくして、バヌアツの復興はありません。ぜひとも、バヌアツ支援という意味でバヌアツへ遊びに来てください。そして、彼らの笑顔に会いに来てください。(バヌアツ親善大使、フリーアナウンサー 相川梨絵/SANKEI EXPRESS)
千葉興業銀行船橋支店の普通口座で、口座番号は1163650。名義は日本バヌアツ親善協会バヌアツ災害義援金口。問い合わせは太平洋諸島センター(電)03・5259・8419。締め切りは2015年4月30日まで。